【高橋 里江・学務情報部図書館チームスタッフ】「四国地区大学教職員能力開発ネットワーク(SPOD)フォーラム2010」に参加して

「四国地区大学教職員能力開発ネットワーク(SPOD)フォーラム2010」に参加して

学術情報部図書館チームスタッフ 高橋里江

 2010年8月25日(水)~28日(土)にかけて愛媛大学城北キャンパスにて開催されたSPODフォーラムに参加させて頂きました。4日間にわたり実施された多彩なプログラムの中から、2日間で4つのプログラムを受講しました。本年度より本学のSD研修へ参加し、このフォーラムを紹介頂いたことが参加のきっかけです。
 
大学において学習・研究を支援する施設である図書館のスタッフとして、学生の図書館業務への参加や学生による自主的な活動、学習支援活動にも関心があり、「学生中心の大学」を目指し、様々な学生支援への取り組みを続けている愛媛大学での研修は、その活動を実際に見聞きできる稀少なチャンスであると思いました。
 受講したどのプログラムも充実した内容で、講師・参加者ともに熱気があり、学ぶべきものが多くありました。特に印象深かったのは学生が提案した大学改善策を具体化するワークでの学生による意見・発表です。真剣で熱い思いが伝わってきて、大学職員として学生の積極的な活動をどのように引き出し、支えていけるか、そのためにどのような能力が必要なのかと深く考えるきっかけとなりました。

【大学職員のための企画力養成講座】8月26日(木)
講師:秦敬治先生(愛媛大学 教育・学生支援機構 教育企画室 副室長・准教授)
 業務改善のための問題をどう発見し、企画として提案したらよいか、チームでの問題発見・解決の能力と企画提案力を身につけることを目標にした講座です。
 グループワークでは「同じ理念や目的に応じた目標を達成するチーム」として、ブレインストーミングにより問題点を洗い出し(発散)、KJ法によってグループ化する(集束)作業を行いました。発散と集束の作業を繰り返すことで、本質である問題を発見し、問題の解決のための企画を立案します。それをより具体的にしてポスターセッションの形式で発表しました。限られた時間でしたが、各チームの企画案は興味深く、発表の時も活発な意見交換がされていました。

【一人ひとりが広報パーソン】8月27日(金)
講師:吉田一惠氏(愛媛大学 広報室 室長)
 愛媛大学では法人化の際に広報室を学長の直下に置き、全学的に計画的に広報を行っているとのことです。学内における情報を共有し、情報発信を一元化・速報化する。広報手段のテレビ、ラジオ、新聞、雑誌等を使いこなす。学長による学内外へのメッセージの発信など、戦略的な広報の手法と取り組み事例が紹介されました。
 グループワークの内容は、「海外研修プログラムで学生を乗せたバスが目的地へ向かう途中に事故を起こした」という設定で、模擬記者会見を体験するというものでした。迅速な対応と正確な情報開示が社会的な信用となること、記者会見にあたっての会見者の選定、発表内容の確認(情報の確保)、意志の統一など、実践に即した課題はとても難しいものでしたが、広報戦略の必要性、危機管理広報の重要性を実感することができました。

【正課外活動支援で「学生中心の大学」を】8月27日(金)
講師:西本佳代先生(香川大学 教育・学生支援機構 特命教授、学生支援 GPコーディネーター)
 学生と共に大学改善策を提案することを通して、「学生中心の大学」づくりについて考えるプログラムです。同日に開催された大学院生・学生対象の「四国キャンパス元気プロジェクト」で学生が考えた企画案をより具体的にするためのアドバイスをすることが課題でしたが、自分たちの大学をより良くしたいという学生たちの気持ちが伝わってくる、活き活きと企画案を発表する学生の姿が心に残りました。
 例えば、学生が大学を好きになるきっかけは仲間と出会い、自分の居場所を見つけること。そして、人との出会いや愛着を持つきっかけはいつでも、どんな事でも良い。そういうチャンスを学生自ら企画として立ち上げることの意味はとても大きく、さらに、その活動を支援できる教職員の存在は大変心強いと思います。教職員として何ができるのか、支援体制が重要であると同時にその思いを受け止め、支援できる能力が必要であると感じました。

【シンポジウム「21世紀に生きる大学・高専教職員の創造」】8月27日(金)
 講師:寺崎昌男氏(前大学教育学会会長)、福島一政氏(元大学行政管理学会会長)
 司会:秦敬治先生
 大学の本質の理解、政策の理解、大学職員に求められる役割など、有益なお話が続くなかで、特に自校教育を取り入れた効果についてとても興味深くお聞きしました。
 大学教育ではなく自大学の歴史を話したら学生が関心を持ったこと。自分の大学の歴史を知ることで学生は自分の居場所を確認でき、安堵感が得られる。弱点を含めて、いろいろな点を克服してきた歴史は自分の大学に誇りを持つことにつながる。学生への講義でだけでなく、職員にとっても大学の成り立ち、経過を知り、原点に立ち返ることは大切なことだと思いました。

 プログラム以外でも、27日(金)の昼食会においてFD/SDに関するテーマで参加者と交流する機会が設けられ、学習支援に携わる教職員の方とお話をすることができました。その際、授業に出席していない学生への早期的な対応をどうしたらよいかといった質問もあり、学部と学習支援に関連する部局で協力できることがあるのでは、と考える機会になりました。

また、会場と隣接する図書館を訪問させて頂き、関心のあった図書館サポーターの活動についても知ることができました。図書館サポーター(LS)はStudent Campus Volunteers(SCV)で活動する9つの団体の一つで、教職員のサポートを得ながら自主的に活動する学生ボランティアスタッフです。各団体は互いに刺激を受け活動しているとお聞きしました。 今回、SPODフォーラム2010へ参加させて頂き、四国地区での盛んなFD/SDの活動を体感できたことは、大変意味があり良い機会であったと思います。各地の大学から職種の異なる教職員の方々が多数参加されていて、同じように問題意識を共有し、これからの課題や意気込み等、いろいろとお話ができて本当に有意義な経験となりました。ありがとうございました。