情報学部のフランス語の授業における取組みについて
田中 柊子(初修外国語科目部会、情報学部)

静岡大学情報学部でフランス語を教えるようになって三年がたちました。最初の頃は受講生にフランス語の文法をしっかり理解してもらいたい、フランス語を話せるようになってもらいたいという意気込みが強すぎたのか、若干空回り気味でした。緊張で態度も堅苦しかったかもしれませんし、教科書に沿って型通りに進めていくのでは単調で、学生も退屈してしまったことでしょう。三年目に入りようやく、程よい肩の力の抜き方がわかり、楽しく和やかな雰囲気で授業ができるようになりました。
情報学部での初修外国語の授業は専門との関連性が薄く、二年次までしか開講されていないこともあって、カリキュラム全体における位置づけが捉えにくい状況にあります。受講生の中には最初から語学や外国の文化に強い関心を持っている学生や、留学を希望する学生もいますが、少数派です。こうした中、どうしたら受講生がフランス語の授業に積極的に参加し、学習に前向きに取り組むようになるのか、というのが私の課題でした。いろいろと試行錯誤をしましたが、今振り返ってみると二つの工夫が功を奏したような気がします。
一つ目は、授業の目標を「フランス語とフランス文化に興味を持ってもらうこと」とかなりゆるめに設定したことです。二年間だけの学習や単位のためのフランス語ではなく、人生を豊かにしてくれる趣味の一つとしてのフランス語に触れてもらえればよいと思いました。授業中にもよく言うことですが、語学は一生ものです。一生かかっても完全にはマスターできないという奥の深さもありますが、語学は自分の世界を広げ、深め、豊かにしてくれます。音楽、映画、ファッション、料理、スポーツ、歴史などどのような分野への関心であっても一つ外国語がわかるのとそうでないのとでは、楽しみ方がずいぶん違うはずです。外国語がきっかけとなる、場所や人との出会い、チャンスもあるでしょう。長い目で人生を見渡したときに生涯学習の第一歩になればよいというようなスタンスで授業に臨むようにしたわけですが、授業のレベルを下げる必要はまるでなく、むしろ好成績の学生が増えた印象があります。何より授業中や授業後に質問をしにくる学生が増えたことをうれしく思っています。
二つ目はより具体的な実践なのですが、情報学部生の「特性」に着目した授業作りです。「特性」というのはいろいろありますが、まずは彼らが専門科目で、メディアと社会のかかわりについて学び、マンガ、アニメ、ゲームといったポップカルチャーを多く分析・考察の対象としていることから、フランス語の授業でもそうした題材を扱うようにしました。例えば、フランスのポスター広告を取り上げ、キャッチコピーとイメージの関係を分析したり、日本のマンガのフランス語版を読んで、セリフの翻訳以外にもどのような「アダプテーション」が行われているのかに注目してみたりしました。今年大ヒットしたディズニーCGアニメ映画『アナと雪の女王』の主題歌「Let it go ~ありのままで」の日本語・フランス語・英語版の歌詞比較もしました。このような題材は一、二年フランス語を学習しただけでは確かに難しいレベルではあるのですが、フランス語の知識が社会や文化を読み解く上で役に立つということやその面白さは十分実感できるはずです。今年度の二年生後期の授業では、マンガに似て非なるBD(バンド・デシネ)にも挑戦してみます。
学生の視点に立ってみると、フランス語についていろいろな疑問がふつふつと湧いてきたり、フランスのこれまで見てこなかった面に関心が向くようになったりして、私自身の世界も広がりました。戸惑うこともまだ多いですが、語学はやはり楽しいと感じながらフランス語の授業をしています。

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