初修外国語教育の将来性と希望
コルベイユ スティーブ(フランス語講師、大学教育センター)

初修外国語シリーズの記事を読み終えて以下の感想をもった。共通言語によるグローバリズムの一翼を担う英語中心主義外国語教育制度の時代だからこそ、多様な言語を教え・学ぶことを断念してはいけない。確かに、英語の習得は厳しい経済状況の中では就職活動に役に立ち、具体的に利用出来る知識と技術を身につける学生の期待に沿うものである。初修外国語教育は英語教育のような分かり易さや既習による積み重ねはないものの、その役割は十分に満たしている。英語と共に、もう一つの外国語を流暢に話せるようになり、外資系又は英語以外の外国語を必要とする企業に就職する学生の人数は実際には僅かであろう。しかし、1年間であっても初修外国語を勉強する学生は、様々なもの得ることが出来る。まず考えられることは、選んだ言語の文化、社会、日常生活について学ぶことができる上に多くの企業が求めるコミュニケーション能力を高めることができる。それは有益なことであるが、更に重要なことは外国語の学習によってフィルターなしで、その言語使用国の文化又は考え方に直接アクセス出来ることである。現在、グローバル社会構造の進展で、物や情報が自由に高速で移動し、すぐ手に入れることができる時代である。しかしながら、ニュースで見る海外の事件も、海外の作家の文学作品や評論も、その国の言語が分からない限り、別の人の翻訳又は解説でしか理解出来ない。当然、全ての外国語が理解できる人は誰もいない。その言語を読み解く翻訳家の文章やその文化を理解する専門家の解説の重要性を否定するつもりはないが、もう一つの外国語が分かると、日本と英語圏の国以外のもう一つの考え方を想像し、理解できる。花方先生の「『グローバル化』にともない、『外国人=アメリカ人』という一昔前の発想がまったく場違いになった今だからこそ、初修外国語の重要性はかつて以上に増している」という指摘に同感する。入門のレベルでももう一つの言語学習が必要なのである。
さらに述べるとすれば、初修外国語の勉強は留学生と交流するよいきっかけになる。現在、静岡大学には英語を母語として話す留学生は殆どいない。当然、日本人の学生と同様に第二言語として英語を勉強し、流暢に話す留学生は多い。又、全ての留学生は日本語を勉強している。そこで初修外国語を勉強することによって、留学生との交流機会が増え、英語のフィルターを使わず、日本語と留学生の母語で話しながら、本格的な国際交流が出来る。張先生の授業では中国語ネイティブスピーカーの留学生が協力し、学習内容を豊かにしている。
今年から、リヨン第3大学のフランス人留学生が4人も留学している。そのお蔭で、仏文コースの雰囲気が少し変わった。フランスに行かずに、同世代のフランス人と話し、意見交換出来る仏文コースの学生にとってフランス語は授業以外でも使える言語になった。つまり、言語取得に非常に大切である新しい動機を見つけたことになる。又それに伴って、自習の時間も増えたように思う。授業中の質問が増え、更にインタラクションがある授業になった。私も翟先生と同様にアクティブ・ラーニングを重視する授業を目指しているので、留学生の参加のお蔭でその目標を達成できると思う。また、日本語と日本文化に非常に興味があるフランス人との交流によって、日本人学生は自分の文化に関して様々なことを発見し、日本の文化を知る重要性を再確認出来たのではないかとも思う。
今回のシリーズでは中国語、スペイン語、フランス語の教員による現場からの体験談を通して大学における初修外国語教育の意義を理解し、更に有益な授業にしようとする熱意を実感した。初修外国語教育には課題もあるが、様々な工夫によってそれらを改善し、21世紀にふさわしい新たな教育法を考えなければならない。それは、張先生と翟先生と田中先生の文章に現れている。多くの学生が外国語に興味を持つ方法、そして上達する方法が考察されている。また、安永先生の文章では、外国語教育は様々な経験や出会いのきっかけになり、社会人学生も積極的に参加出来る授業であることが示されている。英語学習が優先される時代にあって、初修外国語教育はさらに重要な役割を果たしていくのである。

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