浜松キャンパスにおける初めての協働授業(試行)を終えて
 
森部圭亮・図書館情報課雑誌情報係
 

 11月6日(木)の「教育の原理」5・6限にて、松尾由希子先生と浜松で協働授業を実施した。協働授業とは教員と図書館職員がそれぞれの専門性を活かして、学生に文献検索方法を教える授業を指している。詳しくは本学図書館職員である渡邊の「教員と職員の専門性をいかした協働の試み-教職科目における協働授業の実践」 (『静岡大学教育研究』9号、2013年)を参照されたい。平成24年度から数えるとすでに7回実施されている協働授業であるが、浜松キャンパスでは今回が初めての試みとなったため、この場を借りて報告する。
 松尾先生との授業はほぼ半年ぶりで、私にとって今回が2回目である。1回目の協働授業報告については、「教員と図書館職員による協働授業(試行)の活動報告」(『ニュースレター』静岡大学大学教育センターHP、2014年6月9日掲載)に記した。前回の協働授業では、学生から提出されたワークシートの正答率が芳しくなく、自分自身も納得できる出来ではなかった。そのため、今回こそは、という思いを持って教壇に立った。
 授業の結果から述べると、確実に前回よりも質の高い内容になったと感じている。
 学生は意欲的に講義を受けてくれた。講義中に学生を指名して意見を求めたが、良く考えられた回答が返ってきた。また、前回と比べて25人(欠席者1名)と受講生の少ない授業だったが、実習中の質問は同じぐらい受けたように思う。提出してもらったワークシートからも成果がうかがえた。松尾先生が作成したワークシートには、例えば、論文の場合は著者名、論文名、雑誌名及びその巻号数、雑誌の刊行年、ページ数という出典を記入する欄を設けている。これら必須事項の正答率が前回と比べて大きく向上し、前回50%ほどの正答率だった論文の出典の書き方について、84%の学生が正しく記述できていた(工学部学生16人中16人正解、情報学部学生9人中5人正解)。また、新聞記事の出典の正答率も96%と高かった(工学部学生16人中16人正解、情報学部学生9人中8人正解)。
 前回よりも好結果だった理由は様々考えられるが、特に4点について述べたい。1つ目は、1回目の5月の授業経験とその反省を活かした授業改善である。例えば参考文献の書き方はワークシートの記述様式に合わせるよう、口頭でもスライドでも説明を重ねるようにした。また、前回も心がけた「見るだけで理解できるスライド資料作り」をより進めるため、収録刊行物の説明書きを新たに追加したり、資料の右上に現在の説明箇所を示す数字を配置したりした。授業2日前の11月4日に突如CiNiiのサイトリニューアルがあり、スライドの少なくない部分の修正も必要となったが、それにも対応した。
 2つ目は、1回目の授業から今回まで半年を経たことによる新しい気づきである。前回から半年が経っていたので、自分で作ったスライド資料を新鮮な感覚で見直すこともでき、学生がつまずくポイントを再考することができたように思う。そのような効果もあるので、これから協働授業をする図書館職員は、可能であれば一回だけでなく2回以上授業を担当した方が良いように思う。それによりPDCAサイクルをより適切に回すことができ、自分の文献検索の考え方・教え方を確立させることができると考えている。
 3つ目は、学生の質問への対応である。学生からの質問に対して、前回の論文・新聞記事検索実習中は松尾先生も私もその全てに対応していたが、今回は松尾先生がレポートのテーマや内容そのものの質問を担当され、私が検索方法や参考文献の書き方の質問を担当した。互いの専門分野で質問の受付を分担することでこちらも教えやすくなったし、学生も質問しやすくなったと感じている。
 4つ目は、浜松キャンパスの学生の「個性」に応じた講義方法である。静岡キャンパスでは、ウェブの検索に時間のかかる学生もいることを想定して、適当に指名した学生に実技(デモ)をしてもらった。今回実施した浜松キャンパスの学生は、個々人でパソコンを所有し、パソコンの操作や検索にある程度詳しいため、やや時間のかかる実技は省いて口頭での簡単な説明ですませることにした。
 今回の授業は概ね満足できる結果に至ったが、反省点も少なくない。例えば学生のインターネット接続手段の確認不足がその一つである。浜松キャンパスでは、受講生の約4人に一人はテザリングを活用して、スマートフォンの回線でパソコンをネットに接続していたように思われる。しかし、CiNiiや新聞記事データベースは静大で契約しているデータベースであり、学内ネットワークから接続しないと十分な情報を得ることができない。結果、ネットワークの再接続の作業が余分に生じてしまい、データベース検索以前の段階で時間を費やしてしまった。静岡と浜松ではパソコン所持率やネットワーク環境が大きく異なるため、それらに配慮した説明が必要であった。
 他にも、講義中に学生と対話する機会をもっと増やすことが望ましいとも考えている。ただしそれには柔軟な対応力が要求されるので、実現できるかは今後の課題である。
 最後に雑感を述べる。これで協働授業に2回参加したが、これからの研究活動で必須となる情報検索法や参考文献の書き方を、一コマの講義でしっかり習得できることの意義は少なくないと考えている。この成果は松尾先生の指導のもと、”教育をテーマとしたレポートが課される”→”文献の入手方法を学ぶために講義を聞く”という自然な流れの中で行われていることが非常に大きい。例えば図書館が独自に行っているCiNii等のセミナーでは、明確な目的がないまま受動的に出席する学生も一定数おり、彼らのモチベーションは協働授業ほど高くはならない。本学図書館職員の渡邊が上記の論文中でも述べているように、動機づけが学習習得や学習効果に多大な影響を及ぼすことは論をまたないだろう。協働授業のように、図書館の外で必要な時に必要な情報を提供する図書館員のことを海外ではエンペディッド・ライブラリアンと呼ぶが、その存在の必要性を感じさせる経験となった。

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