映画英語アカデミー学会第2回全国大会に参加して

大学教育センター 松家 由美子

 2014年3月1日に同志社大学にて開催された、映画英語アカデミー学会全国大会に参加致しました。この学会は、映画DVDを英語教材に活用することを研究する学会で、映画を通して英語表現に加え、リスニング力、コミュニケーション能力、異文化理解など、さまざまなスキルを向上させることを目的としています。午前に行われたモデル授業では、小学校、中学校、高校、大学の各レベルの英語の授業での映画の活用方法が、模擬授業の形で紹介されましたが、どのレベルの発表からも、これまでの自分の授業を顧みて、改善につなげるヒントが得られ、大変有意義な機会でした。特に中学校部門の、「映画スターになりきって、人を元気づける言葉を身につける」というテーマが印象的でした。教材として、チャップリンの名作「ライムライト」が取り上げられましたが、その中に、道化師が人生に絶望しきっているバレリーナに、以下のような、愛に溢れる言葉で励ます場面があります。”Yes, life can be wonderful if you are not afraid of it. All it need is courage, imagination, and a little dough”(人生は怖れるに足りない。必要なのは勇気と想像力、それに金がちょっぴり。)”Think of the power that’s in the universe, moving the earth, growing the trees! And that’s the same power within you!”(宇宙の力を考えろ。地球が動き、樹木が育つ。その力は君の中にもある。)実際の英語の授業ではこれらのセリフを音読、暗唱、暗写していきますが、このセリフを選んだ理由として、発表者から「受験など悩みや不安を抱える生徒の心に響く言葉を使いたかった」との思いが語られました。これは私にとって今までの自分の授業を振り返る機会になりました。
 今までの私の授業は、元々の研究分野が英語の句動詞や構文であるため、句動詞を習得する方法として、語彙のイメージを捉えることを教えてきましたが、単調なパターンではなく、心に残るポジティブな言葉からアプローチするのは有用であると、模擬授業を受けながら感じました。就職活動や各種試験などの試練に、時には挫けそうになることがあるのは大学生も同じで、その時に助けになる言葉というのは印象が強く、言語が英語に変わっても同じであると思います。印象が強い言葉は、英語を学ぶことに有用であると感じました。勉強だからといって、黙々と頭に詰め込むだけなら1人でもできますが、学習者の立場や気持ちを察して、心に添った教育を行っていくことが、教員が存在する意味なのではないかと思います。
 高校生部門では、使用する場面の長さや、シチュエーションを理解できる場面を選ぶことが成功の鍵となるという重要なヒントの他に、リスニングのみからではなく、映画の画面を見て、宣伝広告やメモに書いてあることを読み取る訓練も、速読や情報の収集に役立つことを学びました。
 午後のセッションでは映画英語アカデミー学会顧問で、字幕翻訳家の戸田奈津子さんが記念講演をして下さいました。戸田先生は年間50本もの映画を翻訳されることもあるそうですが、念願の翻訳家としてのデビューは、40歳を過ぎてからだったという苦労話や、親交のある海外の有名スターとのこぼれ話をしてくださいましたが、どの映画スターも人間性が素晴らしく、派手で煌びやかに見えますが、誰もが大変な努力家とお話しされました。そのようにお話する戸田先生も、翻訳で片目がほとんど見えなくなるほどの大変な激務をこなされ、努力の末の実績と名声と感心しました。
 教育も研究も一朝一夕にはできるものではありませんが、日々、小さなことにも目を向けて学習者の気持ちに敏感になり、地道にコツコツ努力を重ねることが、一人でも多くの学習者の助けとなる教育者になれるのではと強く感じた機会でした。今年1月より、映画英語アカデミー学会静岡県支部の理事に就任致しました。今後は静岡県内での学会活動をリードできるよう、また、戸田奈津子さんの努力を少しでも見習えるよう、日々研究を重ねていきたいと思います。

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