【張盛開(初修外国語科目部、人文社会科学部)】初修中国語に関しての試み

初修中国語に関しての試み
張盛開(初修外国語科目部、人文社会科学部)

教師の日(9月10日)に初修中国語について語るのはふさわしいかもしれない。2012年4月に静岡大学に赴任して3年になる。初修中国語のクラスを持つのも5回目になった。今までに、6歳の子供から83歳の年配者に及ぶ各年齢層の中国語学習者に接してきた。その経験を通しての自信はあったが、毎回の学生アンケートでは平均以下の評価も目についた。もちろん毎回改善を図るが、また毎回新たなショックを受けることもままある。そこで大学生が求めている初修外国語の授業とは何かということを改めて考えてみた。その中で今年からの試みを話したい。
実は前から考えていたことがある。それは留学生をTAとして雇用し、初修中国語のアシスタントとして活躍してもらうことである。しかし大学の決まりとしてTAを採用できるのは100人以上のクラスである。50人以下のクラスでは無理であるため、あきらめていた。ところが、幸いなことに今年は指導学生に留学生が多く、初修中国語の授業にも大いに興味を示してくれたことから、ボランティアとして授業で手助けをしていただいた。その夢のコラボレーションがついに実現できた。
最初の留学生参加授業は、木曜日の午後の補講日にも関わらず、ほとんど全員出席だった。留学生が3人参加してくれた。授業では留学生3人を世話役に班を編成し、それぞれ班員10人ほどを世話する。そして班ごとに、学生が普段から書いていた作文の発表会を行った。留学生たちにより発音のチェックを行い、班の代表を選出し、最後に各班代表の発表会を行った。留学生3人が評価を行い、優勝者を選出した。この試みの前に想定していたことではあるが、予想と期待を凌ぐ結果が得られた。普段の教師1人での授業では想像もできないことが実現できたのである。留学生が世話役としてついていてくれるので、学生たちの積極性も目に見えて解放される。先生には質問を遠慮するが、留学生にならば恥ずかしがらずに質問できる。みんなの前では発言に躊躇する学生も、班の中では積極的に発言する。
自分の話す中国語が中国人に通じた新鮮な感動を覚え、さらに頑張って勉強しようと決心する学生があり、一方で発音が通じなくて悔しがる学生もいたが、全体的に留学生たちのおかげで授業は期待以上に成功裡に終わった。留学生からも「楽しかった、また参加したい」と全員が言ってくれた。その後も留学生たちの参加を得て、中国の食べ物の紹介、観光地の紹介などをしてもらった。そのおかげで日本人学生たちが中国にさらに興味を持つようになった。留学生たちの貴重な時間を使うのは心苦しかったが、彼らのおかげで授業中の雰囲気が楽しくなって来たのは事実であり、日本人学生たちも毎回「今日も先輩が来てくれますか。」と聞いてくる。
静岡大学には多くの国から留学生が来ている。初修外国語の授業で彼らに力を発揮させたらいい効果が出ると思う。大学の外国語の授業で留学生をTAとして雇用し、授業をサポートしてもらう方式はすでに先例があり、すばらしい効果も出ている。新潟大学では初修外国語チューター制度を導入した結果、「日本人学習者の外国語運用能力の上昇はもちろんのこと、日本人学生、外国人留学生の双方において、学習モチベーションの上昇、異文化理解への関心の増大などが報告されています。」(http://verba.ge.niigata-u.ac.jp/13tutor/tutor.html)としている。
留学生にとってアルバイトがわりに自分の母国語や母国の文化を伝えられるだけでなく、日本人と友達になれるチャンスでもある。日本人の学生にとっても留学生がいると、学習成果が随時確認できるし、同じ世代の留学生の目線を通して外国を知ることができる。留学生の友人を得ると学習意欲の向上が期待できる、現実にその例は多くある。大学が留学生をTAとして雇用する効果は一石二鳥、いや四鳥とも言える。
すべての初修外国語の授業に留学生のTA配置が実現できれば、教師、履修者、留学生それぞれに及ぼす恩恵は多大なものがある。学習効果も抜群になるであろう。言うまでもなく、教育の質の向上は大学にとっての成果である。このことがいつか実現できることを願って、このニュースレターを終わりにする。