1.設計のコンセプト

〔1〕全学的な適用にあたっての配慮
  • キャリアポートフォリオは大学在学中の活動を記録して就職活動へ繋げることを目的としていますが、文系・理系など学部による差異が比較的少ないことが特徴として挙げられます。大学での学業に主眼を置いた学修ポートフォリオ方式の場合、各学部のカリキュラムポリシーに沿って詳細な学習目標を設計する必要がありますが、最初の段階では試験的運用という性質も含むことから、導入のハードルが低いキャリアポートフォリオという形が採用されました。
〔2〕任意利用という前提条件
  • 本学は複数の学部・研究科で構成されており、全学規模でポートフォリオ利用を必須化することは極めて難しいと考えられます。任意利用とした場合は学生への動機付けが特に重要になりますが、学生にとって共通の関心事である就職活動への準備は、利用を促すためのテーマとして最も適したものの一つと言えます。
〔3〕キャリアポートフォリオの基盤
  • 目標や活動成果の入力項目を作成するにあたっては、厚生労働省が提供するジョブ・カードをベースにしています。本学で項目にアレンジを加えた上で、まず就職活動時の履歴書をイメージした「自分史」を設定しました。この自分史を3年次以降に作成することを見据えて、1年次からの各学期の活動成果を「学修成果シート」に記録できるよう入力項目を設計しています。
〔4〕組織的利用への発展
  • ポートフォリオが有効に機能するためには、指導教員等によるフォローが欠かせませんが、学部学科や研究室レベルでの組織利用をするにあたっての標準的なテンプレートとしての意味合いも持ちます。本格的な利用をする際は独自シートを作成することもできますが、まず試験的に運用したい場合に導入準備なしですぐに利用を開始できるようになっています。

 

2.システム上の機能構成

  • キャリアポートフォリオは、学務情報システム上の機能群を使ったパッケージとして提供されています。具体的に以下のような機能が提供されています。
〔学修成果シート〕
学修成果シートは、大学側で設定する定型項目に沿って各学期の目標と成果登録を行い、自律的な学修や課外活動等の取り組みを手助けします。機能の概要は以下のとおりです。
=機能の特徴=

(1) 目標・活動成果のサイクルを蓄積する、ポートフォリオシステムの中心的機能。
(2) 就活の面接等で自己アピールの材料となる、大学での活動記録を継続的に蓄積する。
(3) 記録の蓄積に加え、自己アピールに適した取り組みを意識的に探すきっかけを与える。

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〔Liveノート〕
Liveノートでは、大学側が提示する目標区分とは別に、学生自らがテーマを定めて記事を作成します。フォーマットとして、短期目標管理、レポート公開、自由記述の3種類が用意されています。
=機能の特徴=

(1) 学期レベルの目標と連携しつつ、短期的なToDoリストを自ら設定する。
(2) 学内の既知の友人やゼミ生をグループ化し、レポートファイル等を共有する。
(3) 自由記述のブログ形式で活動記録を作成する。サークル内の情報交換等にも使用可能。

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〔自分史〕
自分史は、学期別の学修成果シートを総括するために提供される補助的な機能です。キャリアポートフォリオのパッケージ内では、就活の履歴書やエントリーシートの下書きになるような、実用的な項目が設定されています。
=機能の特徴=

(1) 3年次以降、これまでの学期別の活動成果をまとめるツールとして適宜活用。
(2) 就活のエントリーシートの下書きとなるような項目が設定されており、希望業種等の情報を指導教員や就職相談員と共有することも可能。

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3.作成サイクル

  • 学修成果シートは学期毎に作成することになります。シートは「目標」と「活動成果」をそれぞれ記入できるようになっており、学期始と学期末に各項目への記入を行います。また、学生が記入した内容に対して指導教員は教員既読ボタンにより確認通知を送ることや、感想などのコメントを残すことができます。
  • 毎学期に蓄積した活動記録は、3年時以降に自分史のシートを使ってまとめます。これまでの取り組みの中で特に優れたもの、印象深いものを選択・整理するプロセスを通じて、実際の就職活動での自己アピールへと繋げます。

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4.運用実績と課題

  • 初年度である平成26年度の学修成果シートの利用状況は、組織利用をしている法学科の数を除くと、在学生約10,000人に対して150名程度になっています。Liveノートと自分史に関しては、ほとんど利用されていないのが現状です。
  • ポートフォリオシステムの学生周知方法としては、新年度ガイダンスでの説明や、システムログイン後画面の提出物状況欄への表示で対応をしていますが、任意利用のシステムとしてはあまり大掛かりな宣伝は行われていません。
  • 目標や活動成果の自己管理という本来的な理念はありますが、実際には学生の入力に対して指導教員によるフォローがないと、学生自身が長期間に亘って取り組みを継続することは難しく、宣伝の方向性としては教員や学部学科等の組織に向けた方が合理的であると考えられます。教員向けの周知としては、平成25年度の導入準備期間において教員向け説明会を3回開催し、各種委員会の中でも機能の案内が行われております。
  • e-ポートフォリオは学修成果を蓄積するツールという側面が強調されがちですが、指導教員と学生とのコミュニケーションを助ける道具としても一定の効果が期待でき、既に組織運用が始まっている法学科においてもこの点を評価する声が教員から出ています。今後とも先行して組織運用をしている学部学科等の経験を活かしつつ、それぞれのニーズに合った機能提供をして行く予定でおります。

 

5.参考資料