1.法学科版ポートフォリオについて

  • 人文社会科学部法学科においては、兼ねてからミッション再定義の中でポートフォリオの活用を計画していたこともあり、平成26年4月のキャリアポートフォリオの機能公開に合わせて、具体的な運用方針の検討が始められました。
  • 学科内の教員や内定取得済の在学生からの意見も参考にしながら、法学科独自の入力項目を作成し、全学のキャリアポートフォリオの様式を差替える形で平成26年後学期からシートの公開が行なわれています。
  • 法学科では学生による入力を必須化することとあわせて、所属教員全員が参加してフォローを行っているため、ポートフォリオの利用による具体的な効果や課題等が認識されており、更に人文社会科学部の他学科での展開も検討されています。
  • これまでの主な経緯は以下のとおりです。
[2014年5月]

学務情報システムの既存機能を使う形で、法学科独自のポートフォリオの企画準備を始める。

[2014年10月]

後学期の開始と合わせて、法学科版ポートフォリオの機能が公開される。

[2014年11月]

法学科学生に対して、ゼミ内で利用方針等の説明が行われる。

[2015年2月]

2014年後期の学生入力締切。初学期であることから、成果登録のシートのみを必須扱いとした。

 

2.導入の主な狙い

  • (1) 大学での学びの記録を取る、あるいは大学生活における目標活動成果のサイクルを蓄積することで、これから大学生活をするにあたりどのような目的意識を持てば良いのか、定期的に振り返る機会を設けるため。
  • (2) とりわけ将来のキャリア形成のために現在の学びがいかに活かされるか、これから何を学ぶべきかを意識化するため。
  • (3) さらには、就職活動中の面接に向けて、学生がこれまでどういった経験を積み、知識を学び、成長したかを把握する際に、ポートフォリオの記載内容を役立ててもらうため。

 

3.運用方針(平成26年後期)

  • (1) キャリアポートフォリオのうち「学習成果シート」の活用を法学科の学生全員に対して必須扱いとし、指導教員が担当学生一人一人のポートフォリオを担当する形でサポート体制を構築しました。なお、1-3年生は必須扱いとしましたが、4年生は既に就職活動を終えた時期であるため利用は任意としました。
  • (2) 学修成果シートは学期毎(半年)の作成サイクルとし、学生は学期始に目標項目を入力、学期末に自己評価と達成度を入力することになります。指導教員は記載内容を読み、既読ボタンやコメント機能等を活用しながら学生指導・進路指導の材料とします。
  • (3) 学生成果シートの構成のうち特に「大学での学び」の区分では、下表の通りオリジナルのテーマを提示しています。法学科固有の教育内容やアクティブ・ラーニングを含め、学生実態に合わせた構成としました。

<参考>法学科版の学修成果シート入力項目

 

4.実際の利用状況(平成26年後期)

  • (1) 初年度は、学生に入力を必須として周知しましたが、成績評価の前提にするまでの運用はしませんでした。学生への連絡方法は、ゼミを通しての資料配布の他、一斉メールを3度配信しています。また、教員への連絡方法に関しては、学科会での報告、及びメールを1度配信といった対応を行っています。
  • (2) 1-2年生では必須扱いとした「成果報告」について、締切後2週間を経過した時点で、80%を越える提出率となっています。その他に、未提出扱いとなっていた学生のうち、提出ボタンの押し忘れなどの操作上のミスや、達成度の数値のみを打てばよいと誤解していた事例が複数見受けられました。
  • (3) 教員の側では「既読ボタン」を押すことを必須とし、「コメント欄」については自由裁量としました。2月末時点で既読ボタンの利用率が約70%、コメント欄の利用率が約20%となっています。教員の既読処理に対しては締め切りを作らなかったため、3月以降にも入力者が数名出ています。

<平成26年後期 法学科利用状況調査>
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5.教員からの反応

平成26年後期の半年間の試行後に教員から寄せられた意見を見ると、全体的には継続していくことに対して概ね賛成の声が多く聞かれました。一方で、細部については指摘が多数出ました。作業の負担感については、教員からは特に不満は見られませんでした。

【プラス面の評価】
  • ボランティア活動等、成績や授業態度を通じてしか見ることのできない学生の別の面を知ることができる点で、有益であると感じた。
  • 学生カードだけでは分からない学生の状況が見られて良い。
  • 趣味に重きを置いているのか、社会状況には関心がないのか等、記載内容を通じて学生自身がどの点に重きを置いているのかを知ることができた。
  • 学生が、自分のことを文章にして客観視してみる機会があるのは良い。
  • 就職のエントリーシート、面接用シートで質問される項目と重複しているため、丁寧に書いている学生にとっては就職の際に役立つ内容となっている。
  • 1年生の時に優秀な学生が、その後中だるみするケースが多いが、そういった学生の自律心を養う上で有効ではないか。
【課題等の指摘】
  • 項目が細かすぎて、役立つ内容になっていないのではないか。一つの項目を多くして深く考えさせる必要があるのではないか。(項目分けについては、逆に短くして記録的な要素を持たせた方が良いとの意見もある。)
  • 後の計画立案・実行を誘うような作りになっていない、学生が主体的に記載しようという項目立てになっていないのではないか。
  • 学生指導の面では、目標との関係で履修指導なども重要であるが、その点が欠けている。
  • 自分の思いを書きすぎている学生がおり、就職のために客観的に自分アピールする視点が欠如している。
  • よく書いている学生とほとんど書いていない学生に分かれるが、書いていない学生についてはプライベートなことにも関わるので、どこまで書かせていいのか判断が難しい。
  • 自己評価の数値が、高過ぎる学生や低過ぎる学生がいる。
  • 1年生は新入生セミナーの担当教員が受け持つため、学生との距離感があり、読むモチベーションが起きにくい。

 

6.今後の取り組み

  • 半年間の試験運用を終え、今後取り組みを継続して行くにあたり、学生又は教員の作業が形骸化することなくいかに実質的に意味あるものとして運用できるか、方策を検討する必要があると考えます。学生に対するガイダンスについては特に初年度の指導が重要になってきますが、新入生セミナーや就職ガイダンス等での説明の仕方も検討を行う予定です。
  • 現行システムで不足している機能も数多く挙がっており、優先順位を付けながら今後カスタマイズの依頼を出す予定です。特に、教員が学外から既読操作をできるようにすることや、各学期の目標・活動成果を学生が一覧できる機能などが必要性の高い改修項目として挙げられます。
  • 就職活動でより効果的に記載内容を活かすためには、就職支援課との連携が欠かせません。既に就職相談等においてポートフォリオを活用する方向で相互に了承されておりますが、今後は「学修成果シート」に蓄積した記録を「自分史」にまとめるプロセスを作ることも検討されています。就職支援課との連携のイメージは、下図のとおりです。

<就職支援課との連携イメージ>
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7.参考資料