工学研究科電気電子工学専攻の犬塚博教授にお話を伺いました。教育企画室長の犬塚先生は工学部の英語教育にも大変熱心に関わっておられ、工学部生の英語力の向上のためにご尽力くださっています。英語に関しての先生のご経験も含め、貴重なお話を頂きました。

 

1.3,4年次、大学院ではどのような英語力が必要になるでしょうか?

 3,4年次になるまでに、ある程度の科学論文が読める英語力が身についていることが理想です。サイエンスやネイチャーなどの科学雑誌に記載されている記事や科学論文にはこれまで習ってきたような英語の長文や英字新聞とは異なる表現が見られます。例えば、論文では一文が比較的短く、「~のために」のように目的を述べる文が多いため、to 不定詞や動名詞が頻繁に使われます。また、和訳では単語の意味を組み合わせただけでは、文全体の意味が通らないこともあります。専門分野で必要な英語力は基礎的な英語力の上に培われるものなので、中学校で習ったような文法力を固めることも重要です。

 また、大学院に進学すれば、国際会議で発表する機会があるかもしれません。海外でのホテルやレストランで必ず使う簡単な日常会話も含めて、ネイティブのような英語でなくてもシンプルでいいので、誰にでも伝わる英語が話せるようになるといいでしょう。英語の会話力は経験を積むことで向上します。

 

2.そのためには1,2年次でどのような心がけが大切でしょうか?

 英語力を高めるために、日頃から継続できることとして、静岡大学で導入しているe-learning教材をぜひ活用することを勧めたいと思います。残念ながらe-learning教材を使う機会を逃している学生が多いのですが、e-learningは学習者のペースと、レベルに応じて進めることができる効率的な学習教材です。まずは一度、触れてみることが、次回の活用につながります。英語力向上の特効薬はありません。コツコツと努力を続けることが大切です。静岡大学のe-learning教材に、新しいコースと最新版を導入し、最近のTOEICの問題傾向に即した教材にしましたので、ぜひ活用してほしいと思います。e-learningを通じての自主的な学習と、授業で学ぶ英語の両面から英語力が鍛えられるものと期待しています。すでに静岡大学に入学した皆さんは実力があり、努力すれば必ず成果が出ますので苦手意識を持たずに臨んでほしいと思います。

 

3.TOEICスコアの必要性について

 TOEICのスコアは大学院の入試にも就職活動にも必要になってきます。大学院への進学を希望する場合、4年生になってからの専門科目の勉強とTOEICの勉強の両立は非常に大変です。また、就職を希望する場合も、企業側のTOEICのスコアに対する関心が少しずつ高まっていますので、有名企業を希望するならば、早目にTOEICのスコアを伸ばしておいたほうが良いでしょう。どの道に進む場合でも、将来の自分のためになります。

 

4.将来にむけて意識しておくべきこと

 国際的に活躍している一流企業の中にはTOEICの高得点を入社試験の最低条件にしている企業もあり、中には800点以上を条件にする企業もあります。年々、応募者が持つTOEICのスコアに対する企業側の意識が強くなる傾向にあります。TOEICのスコアのみで不採用となるケースは稀ですが、将来的にはTOEICのスコアに対して企業側がもっと厳しくなることが予想されます。TOEICの点数が高ければ、採用もすぐに決まることもあります。

 また、入社試験でTOEICのスコアを要求しなくても、入社後に英語力を向上させる体制を整えている企業や、昇格試験に一定のTOEIC のスコアを要求する企業もあります。

 これからは、英語は就職活動や大学院の入試のためだけでなく、生きていくために必要な道具となるでしょう。TOEICは回数を重ねることで問題形式に慣れて、スコアが向上する傾向がありますので、1,2年次のうちになるべく多くの回数を受験して少しでもスコアを伸ばしておいたほうがよいでしょう。

 

5.今後、グローバル化が進む社会に対応するためのアドバイス

 将来、日本が各国と共存していくためには、グローバル化は必須です。英語がグローバル化に対応する手段の全てではありませんが、多くの要素で必要となってきます。将来的に英語が必要となることは予測できますが、身近なところでもグローバル化は進んでいきます。静岡大学でもアジアブリッジプログラムが始まり、今後多くの留学生が入学してきますが、積極的に留学生と交流を持ってほしいと思います。せっかく国際交流の場がキャンパスにあるのですから、ぜひこの機会に留学生と英語でコミュニケーションが持てればお互いに世界が広がるでしょう。留学生の皆さんも日本人学生と交流したいと強く願っています。英語の間違いを恐れず、日本人学生、留学生双方が歩み寄れる環境ができればと思います。

 

6.おわりに

 静岡大学の学生の皆さんの英語力向上のために、工学部と大学教育センターの教員が共通の目標に向かって英語教育に取り組んでいきたいと思っています。専門科目と教養英語の双方で、学生の皆さんが将来に向けて実力がつけられるよう、外部機関の有益な情報を活用するなど様々な方面から支援していくことを望んでいます。