2013年度 教職志望者の進路の実態と大学に必要とされる就職支援―理学部生の教員採用試験に関するアンケートより

世古 望美(理学部学務係)

平成25年10月 3日(木)「教員免許状一括申請説明会」において教員免許状取得(申請)予定の学部生及び院生に対して教員採用試験に関するアンケートを実施した。
教職志望者に対しては、これまでも受験をしたか否かの調査は行っていたが、受験結果までの追跡調査は行っていなかった。しかしながら、大学として資格取得者の進路把握の必要性を感じ、昨年度は教員採用試験の最終結果までを調査した。その結果、教職志望者の受験状況や進路を、大まかにではあるが、把握することができた。
今回は、教員採用試験の受験結果の調査に加えて教職志望者の採用試験受験傾向、今年度大学が行なった教員採用試験対策の感想及び今後の支援に対してのニーズ、各都道府県等の教員採用試験(二次試験)について、アンケートを実施した。その目的は、昨年度以上に実態を把握し、次年度以降の学生の就職支援に活用することにある。

1.アンケート調査の方法
 平成25年10月 3日(木)「教員免許状一括申請説明会」において教員免許状取得(申請)予定の学部生及び院生に対してアンケートを実施した。

対象者(有効回答数):理学部生   68名(57名)
            理学研究科生 12名(10名)

実施方法:説明会の出席確認票と兼ねてアンケート用紙を配布。
原則、説明会の最後に回収し、時間のない学生には教員免許状申請書類提出時に提出してもらった。

調査項目:
1.平成26年度教員採用試験受験状況について
教員採用試験の受験の有無、受験した都道府県名(学校名)・校種・教科、及び試験結果を回答する。
2.平成26年度教員採用試験2次試験内容報告
教員採用試験の2次試験を受験した場合に、その内容について詳細を回答する。
また、受験に役立った対策や、大学への要望を併せて回答する。

2.アンケート調査の結果
 1)平成26年度教員採用試験受験状況について
  ①平成26年度教員採用試験の受験について
   
 学部生の半数以上が教員採用試験を受験していないが、これは理学部生の修士課程への進学希望者が多いことに起因する。今回受験しなかった教職志望者の多くは修士課程に進学し、上位の専修免許状を取得する見込みであり、修士課程在学中の教員採用試験受験を予定している。
院生は大学院入学時に一種免許状を有している場合、定められた単位数を修得すれば、専修免許状の取得が可能である。今回の説明会に参加した院生には専修免許状の申請のみを希望する院生も含むため、全員が教職を第一志望とはしていない。

  ②受験した学生の試験結果
   
 学部生は、半数以上が1次試験を突破しているが、最終の2次試験まで合格した者はその半分以下となっており、1次試験対策はもちろん、2次試験対策に力を入れることで、合格率を上げることが期待できる。ちなみに平成25年度の教員採用試験アンケート結果では、教員採用試験を受験した理学部生36名のうち、最終試験合格者が14名(38.9%)、1次試験までの合格者が9名(25.0%)、不合格者が13名(36.1%)であった。

 2)平成26年度教員採用試験2次試験内容報告
 学生が受験した都道府県の2次試験内容の詳細が得られた。学生が出願した都道府県等は14都県及び3市にわたり、そのうち、静岡県(中学校、高等学校)、愛知県(中学校)、三重県(中学校)、長野県(高等学校)、茨城県(高等学校)、栃木県(高等学校)、滋賀県(高等学校)、兵庫県(高等学校)、岡山県(高等学校)の9県について、回答を得た。
 個人面接+集団面接により適性検査を行う都道府県が最も多く、その他、論作文、模擬授業が課される都道府県もあった。面接の形式(面接官数、会場の見取り図等)、質問内容等の詳細な回答は蓄積して次年度以降の教職希望者の就職支援に活用する予定である。

 3)今年度の試験対策として役立ったもの及び要望
理学部では、独自に教員採用試験対策をとっていないが、大学教育センターや就職支援課、教職支援室(教育学部)では、教員採用試験に関わるガイダンスを開催したり、面接対策を行なったりしている。大学が行なったこれらの就職支援に対する感想と今後の要望について、下記回答が得られた。
・実践して慣れることが重要だと感じた。
・友人との質疑応答、小論文の練習が役に立った。
・大学教育センター等の主催で開催された面接対策は役立ち、意識を高めることができた。
・マンツーマンで指導を受けられる機会があるとよかった。
・全学で集団討論、個人面接の対策があるとよい。(7~8月に週1~2回)
・教育学部の院生、教育学部附属学校の支援員と集団討論や面接練習をしたのが勉強になった。
・教育学部の教職支援室の先生に面接練習をしていただいたのが大変役に立った。
・他学部生は入りづらい雰囲気があったが、教育学部の教職支援室にはとてもお世話になった。

試験の雰囲気に慣れ、実践を重ねる場へのニーズは高く、大学教育センター主催のガイダンス等に出席した学生からは、役に立ったとの声が多かった。個人的に大学教育センターや他学部の教員とコンタクトを取り、相談をしたり、指導を受けたりしたという学生も何名か見受けられた。

3.アンケート結果を受けて
 今回のアンケート調査で、一部の学生ではあるが、教職関係の授業やガイダンス参加等をきっかけにして学生自身が頼れる人(教員)、場(教職支援室等)を見出し、実際に相談したり、面接等の指導を受けたりということを継続して行ってきた様子が見えた。試験を受けるにあたって必要な「実践して慣れる」ということはもちろん、教職に対するモチベーションを向上させることにも繋がったようである。
教員採用試験については、理学部独自での試験対策などは行っていない。学部には教職の専任教員がいないこと、また、教職を取っている学生数からも学部単独での試験対策は今後も難しいと思われる。したがって、今後も理学部の学生は大学教育センターや就職支援課、教職支援室の支援を受けていくことになるだろう。学生が自身で行動することは大切だが、学部の職員としては、学生が行動するための糸口を示すべく、大学教育センターや就職支援課、他学部の関係者のご指導をいただきながら、今後も全学ガイダンス等の機会を学生に周知し、参加を促すことから始め、学生が希望する道へ進めるよう、適切なアドバイス(教員、支援室等の紹介)をしていきたいと考える。今回行なったアンケート調査により、学生の実態やニーズがみえてきた。学部の職員として得られた情報を、ご支援いただく関係者にお知らせすることで、教員採用試験対策に役立てていただけたらと思っている。