【松尾 由希子・大学教育センター】教員採用試験・面接対策講座(全学教職課程)の記録―池谷先生の講座に参加して

教員採用試験・面接対策講座(全学教職課程)の記録―池谷先生の講座に参加して)

松尾 由希子(大学教育センター・講師)

 大学教育センターと就職支援課では、2年前から静岡キャンパスにおいて教員採用試験の面接対策を行なっている。対象は人文学部、理学部、農学部であるが、ポスターなどで開催を知った教育学部生も参加している。近年の教員採用試験は「人物重視」の傾向が強まり、1次試験及び2次試験で個人面接、集団面接、グループディスカッションなどを取り入れているところがほとんどである。そこで、本学でも面接対策として、1次試験及び2次試験の前にそれぞれ面接試験の概要を知るための講演会とそれをふまえた講座(実地練習)を開催している。今年度の講演会については教職支援室の渡邉美恵子先生が、講座については昨年度から引き続いて就職支援センターの池谷昌樹先生が担当して下さった。ここでは、参加させていただいた池谷先生の講座(5月22日8時40分~11時50分)について、かんたんに報告したい。池谷先生の1次試験面接講座は、5月22日(木)に2回(午前の部8時40分~11時50分、午後の部12時45分~15時55分)、6月19日(木)に1回(午後の部12時45分~15時55分)の計3回行なわれた。

1 1次試験面接講座の内容

(1)今年度の講座の2つのポイント
 池谷先生が受講者に対してまず話されたのは、本講座の2つのポイントだった。
 1つは、仲間づくりである。教育学部以外の学部では、教職を目指すが学生が少ないため、受験するにあたり「孤独」になりやすい。教育学部では受験生が多いため、グループを作って筆記試験の情報交換や面接練習をしているが、それ以外の学部ではグループを作ることができるほどの人数がいないため、なかなか協力しあえない。昨年度の教員採用試験合格者達の一部は、面接練習でたまたま一緒になった者同士でグループを作ったらしい。その後も連絡をとりあい、面接練習や勉強をしたことが、非常に力になったと話していた(松尾由希子「2013年度教職志望者(全学教職課程)への支援―静岡キャンパスの取り組み」静岡大学大学教育センターHP「ニュースレター」2014年3月27日掲載)。このグループは、教育学部、農学部、人文学部の学生で構成されていた。理学部学務係の世古望美さんからも同様の報告がなされている(「2013年度理学部教職志望者の進路の実態と大学に必要とされる就職支援―理学部生の教員採用試験に関するアンケートより」静岡大学大学教育センターHP「ニュースレター」2014年1月13日掲載)。そこで、この情報を池谷先生と共有し、池谷先生は講座後も出会った「仲間」と勉強しあえるようなプログラムを準備してくださった。
 2つは、実践を多く取り入れることである。池谷先生は「動く・書く・話す」ことを中心にして進めていくと受講者に話されていた。実際、講座180分間の多くが実践に使われていた。
(2)内容
 1つに、面接についてかんたんな説明があった。「面接で問われるもの」「面接の種類」「面接に向けての準備」などである。さらに、講座後の面接の練習場所や頼りにできる人について、教職支援室、就職支援課、今日出会った仲間、教員(松尾など)の紹介があった。
 2つに、実際に面接練習を実施するにあたり動作のポイントや身だしなみなどを確認した。
 3つに、本講座で多くの時間を使った面接練習である。受講者は、自己紹介をするにあたり、ポイントを整理して話せるように、実際に話しだす前にワークシートに記述した。その後、全体の前で一人一人が話していった。自己紹介の後は、池谷先生が質問し受講生がそれに答えるという、個人面接の練習を行なった。自己紹介と個人面接の練習という、2つのテーマに対して、受講者は2人1組になり、自分のパートナーの動作や姿勢、声、話し方などについて「チェックシート」に基づいて確認して、相手に伝えるという作業を行なった。人を観察するという作業は、自分へのフィードバックにもつながる。
 私は後方で受講者の様子をみていたが、話す側も観察する側も熱心に取り組んでいた。また、様子をみていた私にも受講者から「改善点など気づいたことがあったら教えてほしい。」との声がかかり、私も思いがけなく「参加」することになった。授業で会ったことのない私にも積極的に声をかけたのは、教育学部生だった。本講座は、もともと人文学部・理学部・農学部を対象にしていたが、このように教育学部生も参加してくれた。教育学部生は、笑顔で堂々と自分の思いを伝えられていて、他の学部の受講者は圧倒されていたようにみえたが、良い刺激を受けられたと思う。初めは緊張していた受講者たちであったが、自分が話したり、受講生同士で話したりするうちに笑顔もでてきて、終盤にはいきいきと自分の考えていることを話せるようになっていた。

 2 受講者の感想
池谷先生が受講当日に配布・回収した無記名の「就職支援プログラム(セミナー・講座)アンケート」(本報告で使用したのは、5月22日午前の部・午後の部)から、学生の反応がみえてくる。その反応は、大きく3つにわけられる。

(1)実践的なプログラムにより、面接のイメージがつかめた
 1番多かった感想である。「面接のコツやおおまかな流れを勉強することができてよかったです。」「緊張の解き方や話す内容、服装など、細かいところまで伝えていただけてうれしかったです。」「ポイントごとにしっかり大事な点を指導して下さり、大変参考になりました。」などの感想があった。

(2)これから具体的に準備していくきっかけになった
 受講者から「まだ面接についてしっかりと対策できていなかったので、実際に面接を行ないながらできてよかったです。自分一人ではわからない、自分自身の特徴が発見できたので、これからいかせていけたらと思います。」「面接に自信がなかったところがかなりありましたが、どういう準備をしたらいいのかがわかりました。自分だけの力ではどうにもならなかったと思います。」などの感想があがった。
(1)の内容とも重なるものであるが、面接試験に対して、準備や心構えをしなくてはいけないと思いつつ、面接試験の概要がわからないためにどのように動いてよいのか戸惑っていた様子がうかがえる。講座をきっかけに、自分自身と向きあって、試験の場では自分の思いや考えをしっかりと試験官に伝えられるようになってほしいと思う。

(3)雰囲気がよくて楽しかった
 講座開始直後、4つの学部からきた受講者たちは緊張で固くなっていた。初対面の人が多かっただろうし、面接の練習ということで身構えていたのだろう。しかし、講師の池谷先生が常に笑顔で穏やかに話され、「動く・書く・話す」という実践的なプログラムが続いていく中で、次第に持ち前の笑顔で話せるようになっていった。結果、「全体的にいい雰囲気だった。」「先生がおもしろくて、雰囲気が良くて、楽しかった。」「とても楽しかったし、ためになりました。」という感想につながったのだと思う。私と池谷先生が目指した「仲間づくり」についても、このような受容的な雰囲気が効果的に作用したのだろう、「学部以外の仲間ができたのもいい機会でした。」とのコメントもみられた。
 プログラムの満足度について、全員が「大変満足だった」と回答し、実際に観察していた私からみても充実した講座だった。

3 今後の課題

 実践的な内容を多く取り入れ、受講者の満足度も高い本講座であるが、課題もある。池谷先生とも共通している課題は、受講者数である。5月22日午前の部は7名、午後の部は6名、6月19日の午後の部は3名だった。定員は各回16人であるため、もっと多くの人に受講してもらいたい。ただし、教職支援室の面接対策に参加している受験生も多いようだときいている。池谷先生は、教職支援室と本講座の面接対策は異なるよさがあるため、よさを活かして両輪で学生支援できたらいいですね、と話されていた。教員採用試験を受ける学生は、学部は異なるが全て静大生である。教員を目指すすべての学生が、自分たちの良さを十分に発揮して教職に就けるように、私自身も学部を問わず支援していきたい。
 現在、全学の教員採用試験に関わる情報は、就職支援課から対象学部の学務係に連絡し、学務係は対象学生にメールしたり、学部内にポスターを掲示したりしている。今年度の面接講座については、理学部の教務委員の先生もよびかけてくださった。しかし、上でも書いたように全学の面接講座定員数にはまだ余裕がある。面接講座の内容はポスターで告知しているものの、ポスターだけでは内容の詳細がわからずに参加をためらっているのかもしれない。来年度からは、学務係にも相談しながら効果的な告知の方法を考え、より多くの学生に参加してもらいたいと思っている。また、受験生が自分自身に適した支援を選択できるように告知内容も工夫したい。