【柴田 大樹・学務部教務課】教職事務担当者会議の設置と開催

教職事務担当者会議の設置と開催
柴田 大樹(学務部教務課)

1「教職事務担当者会議」の設置過程や目的等について
平成26年11月28日に第1回の教職事務担当者会議を開催しました。
これまで非公式で教職担当者が集まりを持つことはありましたが(松尾由希子「2013年度の教職志望者(全学教職課程)への支援―静岡キャンパスの取り組み」静岡大学大学教育センターHP「ニュースレター」2014年3月27日掲載など)、今回は学務部教務課が主導する形で開催し、TV会議を使うことで浜松地区も含め全ての学部が集まる形態としました。
私個人としては、取り組みの成果物を理解してもらうために、話し合いの経過を簡単に説明する程度の書き方を好むのですが、会議の発案から実施までの経緯を詳しく記録するようにと仰せつかったので、少し詳しめに説明いたします。

(1) 設置の意図
発案のきっかけは他大学のHPの調査をしている折に、岡山大学教師教育開発センターの作成した「教職課程履修ハンドブック」を見つけたことにあります。この冊子には教育学部以外のいわゆる他学部教職に関係する学生向けの説明が詳しく書かれており、それでいてカリキュラムの構造から単位のチェックリストなど非常に分かりやすく案内されています。
本学でもこうしたものが作れるかを考えたときに、当然WGが必要になりますが、実はこのWG自体が現在本学で抱える以下のような課題を解決する手段になり得るのではと思いました。逆に、本来あるべきはずの組織が今までなかったとも言えるのかもしれません。
・平成25年度に行われた文科省による課程認定実地視察で指摘された、教育学部以外の学部における教職指導の全学的体制の整備。
・平成27年度から設置予定の教職センターに対する、事務的分野におけるサポート。
・各学部の教職事務の内容を、全学組織である教務課が十分把握していない現状の改善。
・各学部の教職関連業務(教育実習、事前事後指導、介護等体験等)の共通化又はガイドライン策定。
・担当者のメーリングリストを作成し、教務課や大学教育センターからの案内を随時送付できるようにする。
・複雑で難解な教職関連業務を各学部1人の担当者で行っていることに対する、サポート体制の整備。

(2) 組織論一般からの補足
静岡大学は6学部からなる総合大学であり、教職事務のみでなく様々な業務で学部事務間の横の連携が必要とされます。事業部制組織、職能別組織を交差させたマトリクス組織という考え方がありますが、ここでいう横の連携とは職能別の部分に該当します。実際この組織には問題点もあるためあくまで参考にする程度ですが、最低限業務別の担当者名簿を作る位は必要ではないかと以前より考えていたところもあります。
学部間の連携の重要性については、上田教務課長によるニュースレター記事(上田雅子「繋がって、繋げて」静岡大学大学教育センターHP「ニュースレター」2014年9月30日掲載)でも指摘されており、本企画についても課長からの後押しをいただきました。

(3) 設置に至るまでの準備
設置準備の流れに関して事務的な調整内容ではありますが、参考までに記載します。大まかな順序は下記のとおりですが、関係者の意見を取り入れつつ、リジッドになった段階で次の過程に進むという形で柔軟に対応しています。
① 教務課内での企画案の仮提示
② 学部事務担当者への電話による個別相談
③ 大学教育センター教員への協力要請
④ 大学教育センター長、学務部長への企画説明
学部事務担当者に照会をした際の反応としては、概ね肯定的な意見をいただいており、人文や理学からは積極的な運用を期待する声が聞かれました。既に順調な事務運営がされている学部では特に必要性はないといった反応もありましたが、他学部の状況を知りたいといった意見は潜在的に共通していたようです。
特に大学教育センターの松尾先生には多くのご協力をいただき、会議の実施まで色々とご面倒を見てもらいました。そもそも私自身は学務情報係の職員であり、前職が教育学部であったことから企画に携わっていたのですが、教務課内も含め様々な方のご理解を得て進められたことを、この場を借りて御礼申し上げます。

(4) 第1回開催までの準備
これも事務的な調整ですが、流れを記載します。設置についての照会の時に、学部担当者の方には扱ってもらいたい議題についてもあわせて聞いていました。第1回会議の席では課題等を洗い出すことをメインに予定していましたが、特に教育実習における対応と教員採用試験へのサポートについて、確認をしたいとの声が多かったため、第1回で早速これらの項目を取り扱うことにしました。事前準備の作業としては、以下のような調整をしました。
・業務の全体像を把握するため、各学部の教職事務関係の年間スケジュールを調査する。
・会議資料として共有することを前提に、各学部の教育実習ガイダンス資料を提供してもらう。
・各学部での教採サポートの状況を、就職資料室や情報周知の観点から調査票を作成して回答してもらう。
教採サポートの関係では教育学部の教職支援室の先生にもお話を伺いました。まず利用案内の資料を参考として頂くためお訪ねしましたが、実際の学生の利用状況や、浜松からの利用学生もいたことなど、丁寧な説明をしてもらい理解が深まりました。同時に、担当者会議設置の説明と担当者のメーリングリストを利用した案内周知についても提案して、ご意見を伺いました。

(5) 構成メンバー
会議のメンバーは名称のとおり事務職員を中心に構成しています。また、これまでも全学的な教職課程の業務を取りまとめていた、大学教育センターの全学教職等資格科目部の代表である松尾先生にも教員メンバーとして参加してもらいました。職員は、人文社会科学部、理学部、農学部、工学部、情報学部の学務係(教務係)と教務課(課程認定を担当する教育企画係、教職履修カルテを担当する学務情報係)から選出されています。教育学部の学務係についても、全学の話し合いの中で意見を聞く必要があるため、教務課(課程認定担当)、大学教育センターの教職担当者とあわせて、オブザーバーとしてお呼びしています。司会進行は、職員が順番につとめることになりました。

2 第1回の担当者会議について

(1) 第1回担当者会議の内容
初回の会議の議題として、会議の位置付け、他学部教職の概要、教職関連事務の年間スケジュール、岡山大学のハンドブック、他学部教職の事務運用にあたっての問題点、を挙げました。また、開催の調整をする過程で浮かんだ、前述の教育実習のガイダンス、教員採用試験のサポートも議題として追加しています。
他学部教職の概要の議題で学部別の免許状取得者の状況等を確認した後、個別テーマとして教育実習と教員採用試験について扱いました。教育実習については、各学部の教員免許ガイダンス、教育実習ガイダンスの配布資料を材料にして、基本的な説明内容を確認し、教職履修カルテの説明、実習校の内諾手続き、学研賠、通学定期、麻疹など、各学部での取扱いについて情報交換を行いました。教員採用試験については、事前に配布・回収した調査票等を使い、実際にどのようなサポートをしているか現状を聞きつつ、不足している部分に対して今後何らかの対応が可能か検討を行いました。議論が深まった段階で、最後に各学部の担当者から順番に教職関係の課題等について、意見を求めました。

(2) 第2回以降の担当者会議
事務担当者会議は、教職センターの設置に先んじての開催となりましたが、センター所管の会議のあり方が具体化した折には、開催のタイミングやメンバー等を改めて再構成する予定でいます。重要な課題がある場合は顔を合わせての話し合いも必要ですが、教員・職員ともに時期によっては非常に多忙となることから、メーリングリストを使った方針の提示及び意見聴取といった形態での調整が、今後メインになってくるものと思われます。
今後取り扱うべきテーマとしては、卒業後の免許取得についての相談、カリキュラムと免許要件の理解、課程認定申請に関する業務など様々ありますが、今回作った学部担当者間のコネクションを活かし、教職センターとの連携も取りつつ、引き続き取り組みを進めて行きたいと考えております。

3 「教職担当者会議」の方向性

この会議の意義については、設置の意図の項目で列記していますが、今後開催を続けるにあたってのあり方は、下記のような観点が軸になってくると考えています。

(1) 情報の共有化
教員免許関係の事務では、教員免許法、教育実習、教員採用試験など法令の理解や、実際の対応経験、最新の情報収集など、覚えるべきことが多い一方で、各学部の担当者は1名で業務を担っており、学部の壁を越えて同種の業務を行っている担当者間で問題点等を共有することは意義があると思われます。
また、実習録の様式などは最近共通化の作業をしていますが、共通化まで行かずとも押さえておくべきガイドラインの設定など、業務効率化の観点からも扱うべきテーマは色々とあると考えられます。

(2) 学内資源の活用
学部担当者間のみでなく、学内に存在する様々な組織との連携も求められます。大学教育センター、教務課、教育学部内の各種委員会、附属図書館など各組織の資源を有効に活用することで、より良いサービスを提供できるようになりますが、まずそれぞれが現在運用している業務や活動を知ることが必要です。各所の情報を集約して会議の席に上げることで、新たな取り組みのアイデアが生まれれば良いと思います。
教育学部附属の教職支援室が平成25年度から設置されていますが、教育学部以外の学生にも開放されており、実際の教員採用試験等で大変役立ったとの声が聞かれます。利用の案内については、教職科目の担当教員が授業内で行っていますが、学部事務を経由した情報発信など、更なる有効活用のため今後の方策が考えられるかもしれません。

(3) 教職センターとの連携
教育学部以外の学部における教職サポートについては、岡山大学の教師教育開発センター(https://cted.okayama-u.ac.jp/) など、他大学ではかなり充実した取り組みが行われているケースも見られます。
静岡大学でも、平成27年度から全学教育基盤機構の配下に教職センターが設置される予定です。ここではセンター専任教員の他に教育実習校との調整等を実際に担当している各学部の教務委員も関与して来ると予想されるため、これまで一部学部内のみで認識されていた課題や対応事例が、全学的にも取り上げられることになるのではと思います。教職センターの会議で扱われる内容と、事務担当者会議が担う役割について、次第に分化していくものと予想されます。