【髙橋 典成・工学部学生係長】2010年度第16回FDフォーラム(大学コンソーシアム京都主催)に参加して

2010年度第16回FDフォーラム(大学コンソーシアム京都主催)に参加して

静岡大学工学部学生係長 髙橋 典成

 2011年3月5日(土)、3月6日(日)、京都外国語大学にて開催された標記FDフォーラムに参加しました。組織的FDの取り組み~FD義務化から現在(いま)~と題して全国の大学教育関係者が集い、熱気の篭ったフォーラムでした。参加者は若手の教職員は目立たず、大学の中核をなす教員、管理職員が多かったのではないかと思います。

シンポジウム 組織的FDの取り組み ~FD義務化から現在(いま)~

 FDは、教育の改善を図るための「組織的」な活動の実施という主旨で、大学設置基準には規定されています。組織的に取り組むということは、単に教員の「個人的」な活動に任せるのではなく、大学がFDを進める部署や委員会を作り、活動を計画し、さらなる改善を図るという一環の活動です。2008年のFD義務化から3年目の現在、FDと呼ばれる研修・研究の機会は普及したが、それに携わる関係者は、FDにまとわりつく組織的というキーワードにある種やっかいさを感じてるのではないか?、組織的FDは何故必要なのか?、FD活動の多様な事例と視点からシンポジストが侃々諤々の意見を交わし合うのがシンポジウムのメインの内容でした。
 シンポジウムの冒頭では、京都外国語大学での組織的FDの実践の紹介がありました。学生総数4000人規模の小規模大学だからこそ出来た教授会構成教員全員参加による琵琶湖畔合宿の学外FD(専任教員研修会)の事例が紹介されました。
 また、大学教育学がご専門の立命館大学共通教育推進機構の木野先生は、前任の大阪市立大学時代から授業改善FDに取り組まれたご自身の経歴をご紹介いただきました。
大学での教育研究の在り様に対する疑問から、ある卒業生調査をきっかけに自主講座、授業改善FDと展開させていった努力的な取り組みが紹介されました。学生の心中に潜む問題意識を呼び起こす切り口を持った講座、それを学問的関心に結びつけていく。大学が大衆化安定期を迎え、また大学教育改革を経て大学という環境がユニバーサルな段階に入った現在、学問的探究心を奮い起こすために大学教育は何ができるのか?木野先生はお話の中でこうおっしゃっています。「学生は知識を受ける器ではなく、自ら学ぶ主体である。創造力の喪失の中、教員が良い授業をするためには準備と訓練を要する。教員は教え伝える技術も磨いて欲しい。」
 立命館大学では「学生FDサミット」と題して意欲的な教職員と学生と交流し協力し合うFDを実践し、学生FDを育てる段階に来ているといいます。
 大学生心理学を専門とする島根大学教育開発センターの山田先生はこの分野、若手のホープ。アセスメントの効用と題して、学生の学習成果を高めるため、ヒアリングから
カリキュラム改革に至るまでのサイクルの説明があり、とても科学的な研究をされている印象を受けました。
 シンポジウム最後には、名城大学の池田先生の報告がありました。自ら副学長・理事(教育担当)のお立場から、経営学、人材育成学の手法を使い、持続的な強みづくりに向けたFD活動の動機づけや支援策、チームビルディングの必要性について言及されました。

第1ミニシンポシウム グローバル化とこれからのキャリア教育

 フォーラム2日目、グローバル化とこれからのキャリア教育と題したミニシンポジウムに参加しました。キャリア心理学、人的資源、カウンセリング心理学がご専門の3名の報告者による報告がありました。日本全国の大学で就職率が過去最低の水準に落ち込んだことは新聞等で繰り返し報道されています。このような日本の高等教育を取り巻く環境の中で、現時点での日本の大学のキャリア教育の到達点と、今後目指すべき方向については、大学関係者はもとより社会的にも高い関心が待たれるようになっています。
経済のグローバル化、日本の企業が優秀な人材を海外に求めるようになり、これからの時代にふさわしいキャリア教育のありようについて検討するのがこのミニシンポの主旨でした。
 中でも筑波大学大学院人間総合科学研究科の岡田先生は長年企業で人材育成担当をされていたご経験から、実学と経験からなるキャリア形成の視点はとても良いものの見方だと思いました。
 キャリア教育の視点として、「ひとは働きながら学んでいく」ことを岡田先生は挙げています。就活に勤しむ学生を余所目に入ってみないと分からない仕事はいっぱいある。
入ってからも考え続ける、それが“キャリア”だとしています。社会に入って必死なって仕事をする。日々の仕事、ルーティンワーク、面白くない仕事も多々あるかも知れない。しかし、成功・失敗経験から何か一つヒントを見つける。その時その時の学びを次に活かしていく、嫌な仕事、失敗経験から学ぶものは多い。嫌な仕事の中で、10%,
5%の面白い仕事、楽しい仕事に向け思考錯誤する。そこにキャリア教育のヒントがあるとしています。
 学問と社会がどう関わっているのか?社会へ出る若者を育てる教育機関の役割、社会との乖離を埋め、社会の意向に対応していく大学教育は今、再考の時期を迎えている。
キャリアデザインという言葉が持てはやされているが、それは大学で教える科目ではない。キャリア教育、キャリアアップ、決して高尚な目標を立てる必要はない、その人にあった支援を体系的な理解のもとで提供していくのが肝要。若者の職業観も長い目で見てあげることも必要である。

最後に
 今回、このFDフォーラムに参加して良い刺激を受けました。若手教職員が少なく、
情報交換会では物足りない感じを受けましたが、学び続けるのが大切で、いつまでも探究心を失わず前を見ることは我々大学職員には必要な精神だと思います。前年愛媛大学SPODフォーラム同様、考える葦であるひとは内からなる探究心のもと弛まない努力が必要であることを感じました。公費にて出張させていただいたこと感謝しております。

以上

                           平成23年5月4日