【中村 紗耶加・企画部企画課】文部科学省行政実務研修を終えて

文部科学省行政実務研修を終えて

企画部企画課評価係 中村紗耶加

 平成25年4月から平成26年3月までの1年間、行政実務研修生として文部科学省で勤務して参りました。行政実務研修生とは、大学の職員が知識や視野を広げるため、一定期間研修生として文科省に出向する制度です。研修期間や配属先は各大学でそれぞれ異なっていて静岡大学の研修生の場合は1年間のうち半年で別部署に異動することになっており、前半は大臣官房会計課予算班、後半は高等教育局私学部に配属されました。大変短い期間でしたが、今回はその経験について書かせていただきます。
 前半に配属された会計課予算班は、主に文科省の予算を取りまとめるという部署でした。会計業務の経験がほとんど無かったのですが、幸運にも私の担当した業務は主に班内の庶務関係だったため、実質的に会計業務に携わることはほぼありませんでした。庶務業務を担当することで、文科省の全体的な組織像やどこの部署でどのような業務を扱っているか、など最も基本的なことを理解することができ、最初の配属先としてはとても勉強になるものでした。8月になると概算要求業務が始まり、予算班も本格的に忙しくなります。毎晩遅くまで、時には明け方になるまで仕事をしていることがあり、初めはその労働時間の長さに驚くばかりでした。膨大な文科省予算をたった十数人の予算班のメンバーだけでまとめているので、負担が大きくなるのは仕方ないとはいえ、疲れも厭わず正確な仕事をこなしていく姿に、一人ひとりの職員の能力の高さが伺えました。また、管理職の方々は各部署との調整や財務省への説明など連日のようにあちこちに説明にでかけており、まさにそれらの調整が来年度の予算の結果に繋がるという、仕事の規模の大きさとレベルの高さにとても驚いた記憶があります。遅くまで残ることも度々あったものの、次年度の予算を決定するというとても重要な仕事にほんの少しでも関わることができ、とても良い経験になったと思います。昼夜問わず膨大な仕事量を正確かつスピーディにこなしていく予算班の皆さんの仕事ぶりは、行政職員として学ぶところがとても多いものでした。
 後半の高等教育局私学部では、学校法人の経営指導業務に関わりました。私立は国立と違い、法人の持つ理念や個性の違いが学校経営や教育方針に明確に表れており、とても興味深く、国立大学職員としてはその自由度が少しうらやましくも思えました。私学ではトップのやり方が学校づくりに大きな影響を与えているため、国立とは異なる独特な雰囲気がありました。私自身も私立大学の出身ですが、理事長や役員の方々を知ってから大学を見ると、その理念や人格などが学校のすみずみまで染みわたっているように見えて面白かったです。また、ちょうど私立学校法の改正時期と重なっていたため、学校法人に対する説明会を開催したり、国会に行ったりして法改正の瞬間を目の当たりにすることができました。今回の改正は学校法人の運営が法令に違反または著しく不適正な事態に陥った場合に、所轄庁が適切に対応するための仕組みを整備するものであり、国立と同じように私立を取り巻く環境や社会的役割も時代とともに厳しさを増しつつあることを感じました。
 また、業務以外では研修生を対象とした関係機関への見学会などが定期的にあり、私立大学やスポーツ施設や研究所など普段訪れない場所を見て回ることができたのも良い経験でした。個人的には解体工事前の国立競技場に最初で最後に訪問できたことが良い思い出です。そして何より、他大学の研修生と親交を深められたことが大きな経験でした。同じ研修生の立場でも、すでに二年以上研修を経験していたり、転任を考えていたり、文科省研修の後に関係機関で研修を継続する人など、色々な立場の人がいました。それぞれ所属の大学は違いますが、同じ研修生ということで、研修の苦労を分かち合ったり、互いの大学や配属先の情報交換をしたり、業務外でも一緒に遊びにいったりと良い関係を築くことができました。こういった他大学との交流も研修に行かなければ経験することは無かったと思います。交流してみて一つ驚いたのは、大学によっては常に数人研修生を派遣していて、文科省との交流を密にしていることでした。静岡大学は行政実務研修については職員本人の意思に委ねているため、毎年一、二名程度に留まっていますが、職員個人の研修という意味だけではなく、これからは文科省との交流を様々なレベルで強化していくために、行政実務研修に力を入れていくことも大学としては必要なのではないか、と考えさせられました。
 研修に行く前、文科省は遠い存在のように感じていましたが、研修を経たことでこれまでよりもずっと身近な存在になった気がします。国立大学法人は文科省の政策の下にあり、私たちが日々こなしている大学での業務の一つ一つが、文科省から見れば大学の意思として映るため、些細なことでもおろそかにしてはいけないのだという実感を持ちました。大学改革についての理解も、以前は表面的なものに留まっていましたが、研修を通して、大学を取り巻く環境の厳しさや、文科省の方々の教育に対する考え方や熱意等を間近で聞くことで、よりいっそうその重要性への理解が深まりました。一年間、大変なことも多かったですが苦労したことも楽しかったこともどれも大学ではできない経験でした。この研修で経験したことを忘れず、教育行政に関わる職員の一人としての自覚をあらたに今後も大学での業務に取り組んで参りたいと思います。