1.情報学部ポートフォリオについて
- 情報学部ではJoy_Portと呼ばれるポートフォリオシステムを独自に開発・運用しており、全学の学務情報システムにe-ポートフォリオが構築される以前の2011年からノウハウを積み重ねています。
- Joy_Portは業者が作成した既存の製品ではなく、オープンソースのプラットフォームから独自開発することで、大学内において比較的容易に機能のカスタマイズを行えることが特徴です。
2.経緯
情報学部においては以下のような流れで、e-ポートフォリオの導入・運用が進められています。
[2010年12月]
- Joy_Portプロジェクトが発足する。
[2011年4月]
- 学習ポートフォリオ運用WGが設置される。
- Joy_Portのサーバが稼動し、各種機能の試験操作が可能になる。
[2011年6月]
- 一部学生の協力を得て負荷テストを実施する。
[2011年10月]
- 一般学生に対して機能を公開する。
- Joy_Portの利用説明会を開催する。
- 学部1年生の学生相談週間において教員サポートも含めた試験的運用を行う。
[2012年夏期]
- インターンシップ参加者の進捗状況管理ツールとして利用される。
[2013年4月]
- 学外からJoy_Portへのアクセスが可能になる。
3.組織体制
第1期 有志グループ(2010年12月~2011年3月)
- 教員6名、大学院生3名、学部生1名、技術職員1名
第2期 学習ポートフォリオ運用WG(2011年4月)
- 教員6名、大学院生3名、学部生1名、技術職員1名
4.機能の概要
動作環境
- 国立情報学研究所が提供するオープンソースのCMS(Contents Management System)であるNetCommonsをベースにしています。環境設定や立ち上げも含め、情報学部が自前で開発しており、一部は独自機能として外注による機能拡張を行っています。
- NetCommons及び動作環境は学内の既存サーバ上に構築し、費用の圧縮を行っています。
ルームを利用した機能実現
グループウェアとしての機能も持つNetCommonsではルームと呼ばれるユーザー共有スペースを有しており、このルームに適切な利用権限を割り当てることにより、ポートフォリオの作成をサポートしています。
〔権限別のルーム構成〕
3種類のルームを作成して、それぞれ以下のように利用権限を与えています。
[A] プライベートルーム
- 学生本人のみが参照でき、学生が個人的に利用する情報を置くことができる場所です。
[B] ポートフォリオ
- 学生と指導教員のみが参照でき、学生の学んだことや成果物を蓄積し、指導教員と共有することができる場所で、Joy_Portの中心的な機能になります。
[C] フリースペース
- 学生が選んだ任意の参加者のみが参照でき、勉強会やサークル等で情報を共有することができる場所です。自分の作ったToDoを仲間に見せることで、ショーケースポートフォリオとしての効果を持たせることもできます。
〔ルーム内のモジュール配置〕
各ルームにはモジュールと呼ばれる機能を追加することができ、これが実際のポートフォリオ作成をサポートしています。主なモジュールは以下のとおりです。
[A] ToDo
- 学生が自分で目標を立て、目標に対する進捗率を随時更新することができる機能です。
[B] 学習マイルストーン
- 大学が学生に対して身につけてもらいたい項目等を提供する機能で、ToDoと同じ形式により学生が進捗率を随時更新していきます。
[C] ファイルキャビネット
- 学生がファイルをアップロードすることができる機能です。成果物のファイルを指導教員等と共有することができます。
5.教員の関与
- 情報学部では半年に1度の学生相談週間を設けており、全ての学生が指導教員と面談をする機会があります。
- 学生相談週間でポートフォリオの記入内容を利用することで、下図のように指導教員による定期的な学習活動のチェックを卒業まで受けることができます。
<1年生への指導体制> | <2年生以上への指導体制> |
6.利用活性化策
大学でのポートフォリオシステムの一般的課題である学生の自発的利用の促進に関して、情報学部においても様々な取り組みを行っています。
(1) ポータルサイト化
- 情報学部のネットワークからWEBアクセスを行った場合、まず最初にJoy_Portの画面が表示されるようにし、ポータルサイトとして位置付けました。
(2) 学外アクセス
- 当初は学内限定であったJoy_Portを学外公開することで、学生が自宅でゆっくり目標や成果をまとめられるようにしました。
(3) 利用方法ガイダンス
- 1年次の4月に実施され、Joy_Portの利用を開始するための初期設定等について説明します。
(4) 新入生セミナー
- 1年生がほぼ全員履修する新入生セミナー内において、ポートフォリオを作成する意義の説明、ワークシートを利用した実際の入力作業の演習を行い、目標や成果の書き方を教える機会を設けています。
(5) 学生相談週間
- 半年に1度設定されている学生相談週間という既存の取り組みを利用して、学生が作成したポートフォリオを教員がフォローする制度を立ち上げています。
7.発展的な利用及び今後の展望
インターンシップ
- 企業インターンシップにおいては、「過去の参加者と事前に知識や情報を共有したかった」という要望が例年学生から寄せられており、こうした声に応える趣旨で専用のポートフォリオ様式を作成しました。
- インターンシップの事前準備、実習中に行うこと、及び事後作業のそれぞれの区間に分けたチェックリストをToDo機能により提供することで、参加学生が適切な行動を取れるよう配慮しています。後日、派遣先企業へのアンケート調査を実施した際には、こうした取り組みに対して高い評価を受けています。
就職活動での利用
- Joy_Portを利用して、就職活動時の履歴書を作成するプロセスについても、今後の取り組みとして検討を進めています。
8.統計的考察
導入初年度である2012年度における利用統計を下記に例示します。学生相談週間やポートフォリオを利用する授業がある時期に利用件数が伸び、長期休暇期間中に減少している状況が見て取れます。
<学年別ログイン件数> | <ページ別閲覧件数> |
9.参考資料
- Joy_Port利用マニュアル(H26.4.22版)
- Joy_Portトップページ
https://joyport.inf.shizuoka.ac.jp/ - 学習ポートフォリオシステムの構築-技術職員の視点から-
http://ir.lib.shizuoka.ac.jp/handle/10297/6557