【島田 桂吾・大学教育センター】着任のご挨拶

着任のご挨拶

島田桂吾(大学教育センター)

 

 今年4月に学術研究員として着任しました島田桂吾と申します。私は関東平野の真ん中にある埼玉の地で育ったため、キャンパスから駿河湾や富士山が望める環境がとても新鮮に感じています。初めて静岡大学を訪れたのは昨年度、教育学部で開講された「子ども法」の非常勤講師を務めた時でした。3日間だけの集中講義でしたが、落ち着いたキャンパスの雰囲気の中で熱心に授業に取り組む学生のみなさんと触れ合うことができました。それ以降、密かに「静岡大学で働きたいな」と思っていたので、このような形でご挨拶ができることをとても嬉しく思います。
 さて、少し私の専門についてご紹介いたします。専門は教育行政学で、教育政策の立案過程分析を通じて、文部科学省や教育委員会がどのような役割を果たしてきたのかなどについて研究を進めてきました。最近では、就学前の乳幼児期の子育て支援政策に焦点を当てて、教育政策と福祉政策の融合をはかろうとする諸要因やその影響等について研究を進めています。このように説明すると「教師教育に関心がないのでは?」と思われるかもしれませんので、このような道に至るまでの経緯を簡単に記しておきたいと思います。最初に教育に関心を持ち、教員になりたいとぼんやり考え始めたのは14歳(中学3年生)の時でした。きっかけは、その年におきた「神戸連続児童殺傷事件」をはじめとする少年犯罪とそれをめぐる世論の動向でした。これらに違和感と不信感を抱きつつも、教員という職業に関心を持つようになりました。しかし、大学受験を控えた頃は教員採用の「氷河期時代」であり、教員養成系の教育学部は再編の渦中にありました。この頃から学校教育以外の教育について関心が高まりつつあったため、新課程(いわゆる「ゼロ免」)で生涯学習を学ぶことにしました。そこで「生涯を通じた学びをどのように保障するか」という点に共鳴し、公民館や図書館などの社会教育施設の在り方に関心を寄せるようになりました。ところが、卒論を書き始める頃から「小泉改革」によって、行政改革や規制緩和の波に教員や教育施設が呑み込まれていく姿を目の当たりにしました。そこから、教育論だけではなく政治や行政も分析対象にする必要性を感じ、現在のようなテーマを選びました。このような研究を通じて間接的ながらも教員の方々のお役にたつことができれば本望だと考えています。
 次に、本学での主な任務である教員免許更新制について記したいと思います。教員免許更新制は2005年6月に改正教育職員免許法が成立し、2009年度から導入されました。これにより、教員は10年に1度、大学等で開講される教員免許更新講習(以下、更新講習)を30時間以上受講し、講習の最後に実施される修了認定試験に合格しなければ免許は失効することになりました。巷でよく言われる「指導力不足教員」の排除ではなく、定期的に最新の知識技能を身に付けることが目的とされています。教員免許更新制について教育行政学の立場から政治的側面を見ると、自民党政権下で現行制度に落ち着いた過程や民主党政権がマニフェストに「廃止」と掲げておきながらも継続しているという事象は大変興味深いのですが、ここでは行政的側面から特徴的と思われることを記しておきます。それは、暗黙的に認識されてきた「養成は大学、研修は教育委員会」という構図の再編を迫ったものと捉えられるという点です。教育委員会主催の研修に大学の先生が務めることや、長期研修として教員が大学院に所属する仕組みはありましたが、一定期間職務についた教員ほぼ全員が大学という場で講習を受けるというのは、大学にとって大きな転機になるのではないかと考えています。たしかに教育委員会主催の研修との違いが不明瞭という印象も受けますが、「幼稚園から高等学校までの校種に勤務し、30代、40代、50代の教員が共に学ぶ」という点は更新講習ならではの特徴であると感じています。講習を担当される講師の先生方にとっては「授業の焦点が定めにくい」とお感じになられると思いますが、子どもの異なる発達段階に触れており、かつキャリアが異なる教員が共に学ぶ更新講習は、「生涯を通じた学び」が子どもたちだけではなく教員自身にも向けられているということを再認識できる貴重な機会であると考えています。
 現在、中央教育審議会の特別部会で大学における教員養成の在り方が問い直されていますが、先述した特徴を持った更新講習にも解決のヒントが隠されているのではないかと考えています。このような状況の中で私に課せられた役割は、関係各所と密に連絡をとりながら更新講習を滞りなく実施できるようにすること、更新講習の改善に資する知見を提供することだと思います。その実現に向けて微力ながらも精進していきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

Previous article

着任のご挨拶