【松尾 由希子・大学教育センター】教職志望者の実態とニーズ―2012年度4月教採ガイダンス(全学)のアンケートより
教職志望者の実態とニーズ
―2012年度4月教採ガイダンス(全学)のアンケートより―
平成25年度静岡県教員採用選考試験の受験者(中学、高校)を対象に、4月19日に教採ガイダンスを開催した。人文社会科学部、理学部、農学部、教育学部の学生が参加し、静岡県教育委員会学校人事課の杉山禎先生と小山純一先生にお話をいただいた。内容は、静岡県の教育、静岡県が求める教師像、平成25年度教員採用選考試験の選考の特徴など採用試験に関わる話や教育実習の目的や心構えなどである。高等学校を中心に話していただいた。これまで、教育学部以外の学部で教員を目指す学生についてはほとんど支援がなされておらず、教職志望者の実態もよくわかっていなかった。そこで、今回のガイダンスでは、静岡県で教員を目指す学生に限られてしまうものの、教職志望者の属性と学生が支援してほしい内容についてアンケートを行なったので、その結果を紹介する。84名のガイダンス参加者のうち、57名の有効回答を得た。
1教職を希望する学生の属性
表1は、回答者を学部別に数えたものである。人文社会学部13名、理学部30名、農学部2名、教育学部12名になった。理学部の学生が、約半分を占めている。
表2は、回答者を学年別に数えたものである。学部4年生52名、修士1年生2名、修士2年生3名になった。学部4年生が多数を占める。静岡県は、「大学院修士課程1年生の特例」をとっているため、修士課程1年生の時に採用試験に合格してもそのまま研究を継続し、修了後に教職につくことができる。この特例制度により、修士1年生でも受験を考える学生がいる。
表3は、回答者の受験希望校種をまとめたものである。中学校20名、高等学校36名、特別支援学校1名になった。約6割が高校を希望しているが、中学校を希望している学生も3割を超えている。さらに科目別にみていく。中学校希望者20名の内訳は、理科8名、数学5名、英語4名、美術1名、家庭科1名、社会1名である。高等学校希望者36名の内訳は、数学11名、理科8名、国語6名、地歴2名、工業2名、美術2名、英語1名、保健体育1名、農業1名、公民1名、家庭科1名である。特別支援学校1名は、中学社会である。中学校希望者及び高等学校希望者の半分以上が、理科や数学の教員を目指していることがわかる。
2 本ガイダンスの感想及び意見
今回開催したガイダンスについては、学生からは以下のような感想や意見を得られた。
・採用試験の前に話をきくことができて、参考になった。(科目別の倍率等)
・教師に必要な資質や心がけを知ることができた。
・教師という職業の魅力を再確認することができた。
・静岡県がめざす教育について知ることができた。
・教育実習や採用試験に対して、意欲が高まった。
・志望動機やめざす教師像など、自分を見つめなおそうと思った。
・教育現場の話が心に残った。
・間近にせまった教育実習の話をきくことができてよかった。
回答者のほとんどが、採用試験を受験するにあたってモチベーションが高まったり、教員になりたいという気持ちが高まったりしており、有意義であったと答えている。また、参加者の多くが5月半ばから教育実習にいくため、教育実習の目的や心構えをきくことができて、参考になり、実習が楽しみになったと答えている。一方で以下のような感想や意見もあった。
・中学校を希望している人もいるから考慮してほしかった。
これまで採用を希望する校種を調べたことがなかったため、高等学校の合格者が多いという昨年度の採用状況参考にして、高等学校の話を多くしていただいた。今回のアンケート結果によると、確かに高等学校を希望する学生のほうが多いのだが、中学校を希望している学生も3割を超しており少ないとはいえない。
3教職をめざすうえで、期待する支援
教職をめざすうえで、支援してほしい内容や開催してほしいガイダンスについてきいた。その結果、以下のような回答が得られた。
・面接指導
・小論文指導
・教員採用試験に合格した先輩や教員の苦労話を聞きたい
・教育実習(指導案の書き方など)
・静岡大学での模試受験
・願書の書き方
・参考書の紹介
・教員採用試験の勉強の仕方
特に、面接指導、小論文指導、試験合格者の話、静岡大学での模試受験を希望する声が複数あがった。面接指導については、昨年から全学でもとりくんでおり、今年も開催する予定である。全てのニーズにこたえることは難しいが、できる範囲で学生を支援したい。
アンケートの結果より
今回、アンケートをとったことで教職志望者の実態やニーズの一端がみえてきた。教職志望者については、予想していたよりも中学校の教員志望者が多いことに驚いた。実際の採用人数をみると、理学部、人文学部の学生は中学校よりも高等学校で多く採用されている。この情報を学生に伝えたうえで、それでも中学校を志望する学生には何らかのアドバイスや支援が必要だろう。また、「期待する支援」にもさまざまな内容があがった。全てを網羅することは難しいが、できることは支援し、また就職課でも教職には限らないものの面接指導などを行なっているときいているので、学生へ紹介したい。今後、このような機会があるときに、再度調査をして学生の実態やニーズの把握につとめ、教職を希望する学生の支援の参考にしたい。
最後に、講師をつとめてくださった教育委員会の杉山先生と小山先生、ガイダンス開催にあたり学生への周知やアドバイスをしてくださった就職課や各学部の学務係に感謝したい。
大学教育センター研究報告『Journal of Shizuoka University Education No.8』について