【島田 桂吾・大学教育センター学術研究員】教員免許状更新講習(2012年度)実施状況について

教員免許状更新講習(2012年度)実施状況について

(大学教育センター学術研究員 島田 桂吾)

 本学では2009年度から教員免許状更新講習(以下、更新講習とする)を実施しています。ここでは、更新講習の実施体制と2012年度の更新講習実施状況について報告いたします。

(1)更新講習の実施体制
 本学の更新講習を企画・立案・実施するために、「静岡大学教員免許状更新講習企画委員会規則」(2009年5月20日規則第11号)に基づき、更新講習企画委員会(以下、企画委員会とする)が置かれています。委員は、大学教育センター長(教育担当理事)、各学部教務委員長、教職等資格科目部代表等であり、主に①講習の企画・立案、②講習の予算、③教育委員会及び協力大学との連絡調整、④講習の広報及び受講者の募集、⑤講習管理システムの運用等について必要な事項を定めるために、定期的に開催されています。

 また、企画委員会の審議に先立ち、更新講習実施委員会(以下、実施委員会とする)が開催されています。実施委員会は、大学教育センター長(教育担当理事)や教育学部の更新講習担当教員に加え、学務部教務課長と教務副課長、教育学部学務係の事務職員等から構成されており、大学教員と事務職員の両方の観点から議案を審議しています。

 上記2つの委員会を経て決定される事項を実務的に進めるために、更新講習企画室(以下、企画室とする)が組織されています。企画室は、学務部教務課と教育学部学務係の事務職員等を中心に構成されており、受講者や担当講師の対応等、更新講習に関する実務を日常的に行っています。

 学術研究員は、これらすべての組織に所属しており、静岡県教育委員会や他大学との連携を図りながら、本学の更新講習全体を調整する役割を担っています。

(2)2012年度の更新講習実施状況
①概略
 更新講習は、「教育の最新事情に関する事項」(以下、必修領域)と「教科指導、生徒指導その他教育の充実に関する事項」(以下、選択領域)から構成されています。教員免許を更新するためには、必修領域を12時間以上(概ね2日間)、選択領域を18時間以上(概ね3日間)受講し、それぞれの講習で履修認定を受ける必要があります。

 本学の必修領域は、本学静岡キャンパス(静岡市)、本学浜松キャンパス(浜松市)、日本大学国際関係学部(三島市)の3会場で実施しています。選択領域は、本学と浜松医科大学、聖隷クリストファー大学、静岡県立大学、静岡産業大学と協同で実施しています。

 今年度は、4月上旬にホームページ上でシラバスを公表し、5月1日から31日までインターネットによる受講申込みの受付を行いました(秋季は9月1日から15日まで追加募集を実施)。講習は夏季(8月1日~22日)と秋季(10月26日~11月10日)のうち22日間で、必修領域4講習、選択領域61講習を開講しました。最終的に、必修領域690人、選択領域延べ1,971人の履修認定を行いました。

②事後評価結果
 講習終了後に、受講者に対してアンケート調査(以下、事後評価とする)を実施しました。質問項目は、文部科学省から指定されている「Ⅰ.講習の内容・方法についての総合的な評価」「Ⅱ.講習を受講した受講者の最新の知識・技能の修得の成果についての総合的な評価」「Ⅲ.講習の運営面(受講者数、会場、連絡等)についての評価」です。この3項目の結果を平均したものが図1(必修領域)と図2(選択領域)です。おかげさまで、必修領域と選択領域のいずれも9割以上の受講者から高い評価を得ることができました。


図1 事後評価結果の推移(必修領域)
図2 事後評価結果の推移(選択領域)

 

③障害を持つ受講者への対応
 今年度は、視覚障害(全盲)と聴覚障害(片耳)の複合障害を持つ方から受講申込がありました。本学の更新講習では初めてのケースであったため、先行事例を参照しながら、可能な限り対応することにしました(先行事例については、川口あゆみ・郷右近歩(2011)「視覚障害を有する教員に向けた教材作成支援の課題―三重大学教員免許状更新講習における取り組み」『三重大学教育学部研究紀要』62巻、pp.109-114をご参照ください)。

 まず、受講決定後に受講者の勤務校へ出向き、障害の程度の確認や必要な補助等について協議を行いました。この場で、①通常の会話は可能であるが、指示語(「その」「あの」等)が多用されると理解しにくくなる、②講義資料をテキストファイル化すれば、パソコンに搭載されている音声読み上げソフトを使って内容を理解することができる、③パソコンを用いて文章を書くことはできるが、誤変換を減らすためには時間がかかる、の3点を確認しました。

 この結果を受けて、担当講師の先生方と特別措置の在り方について協議を行い、①講習実施前に該当する受講者へ講義資料をテキストファイルでお送りする、②講義中は大学院生をアシスタントとして配置し、講義内容の補足説明をする、③試験は別室で時間を延長して行い、パソコンでの回答を認める、の3点を決定しました。未知のことが多く不安もありましたが、担当講師の先生方や他の受講者のご理解とご協力もあり、大きな混乱もなく終えることができました。

 今回の経験から、受講者の状況次第で大学側に求められる対応は大きく異なることを実感しました。今後も様々なニーズを持った方が受講申込をすることが予想されますが、受講者のニーズを的確に把握することから始め、受講者が不利益を被らないよう、関係する方々へご理解とご協力を得ながら誠実に対応することを心掛けていきたいと思います。