日本青年心理学会第21回大会 参加報告

坂井敬子(大学教育センター 講師)

11月16-17日,福島大学の主催による日本青年心理学会の第21回大会が,コラッセふくしまで開催された。以下では特に,大学生のリアリティ・ショックに関する2点の発表について,私の日頃の関心と絡めながらまとめたい。

東京電機大学の石田氏の発表では,工学系大学がフォーカスされ,1年生の7月時点の満足感や適応感が,講義内容に意義が感じられないことを表す「講義内容不満」と,負の関連性を持つことが示された。よって,基礎的な学習の意味を丁寧に説明することが重要だということであった。私自身が本学工学部の学生に対して持っている印象とリンクするところがあって大変納得した。石田氏がいう工学の基礎的な学習の大切さを説くことだけでなく,教養科目など工学とは直接関連のない学びの意義を理解してもらうことも重要だろう。工学部の学生は,学業と職業の接続を強く意識し,専門の学びにかなりのエフォートをかけるだけに,教養科目の意義を感じにくくなっているのではと考えるためである。

筑波大学大学院の千島氏の発表では,対象者の専攻は明らかではないが,友人関係・学業・行事に関するリアリティ・ショックが不適応的状態をもたらすのに対して,時間的ゆとりに関するリアリティ・ショック(「案外大学生活は忙しい」ということ)はむしろ適応感を高めうることを示した。重ねて,期待と現実のズレを減らすよりも,リアリティ・ショックの経験にどう対処するかが重要であるとの主張がされた。私が1年生(静岡4学部対象)の授業で,履修者自身のリアリティ・ショックについて振り返ってもらうときに,件の「案外忙しい」という声はよく聞かれる。その他には,「なんでも自律的にやらなくてはならない(授業の選択や友人づくりなど)」,「専門の学びが少ない」などがある。それでも学生たちは,新しい目標を作ったり,意外な自分の興味を発見したりと,認識や行動を変えてショックに自ら対処しているようである。これも千島氏の主張を裏付けている。

私たちが介入すべきリアリティ・ショックについて考えさせられたセッションであった。