理系基礎科目部の課題と展望
岡部拓也(理系基礎科目部代表・工学部)
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_理系基礎科目は,情報学部・理学部・工学部・農学部の1-2年次の学生を対象にした,理系分野の専門教育のための基礎知識と一般的な教養を習得するための科目です.
基礎と名のつくとおり,この上に専門的知識を積み上げていくための土台となることから専門科目受講の前提条件とされるため,進級上の理由からも非常に重要な位置づけを与えられています.
基礎科目には幅広い視野の養成が求められますので,地道な努力を回避した一点突破型の暗記では対応できません.高校までの受験的学習法から脱皮しきれない学生にとっては,留年のリスクを抱えた大学進学後の最初の試練となるかもしれません.そういうわけで現実的な課題は留年生対策になるかと思います.もちろんこれは結果なのであって,根本的には受講生個々の内発的動機づけの問題ですので,制度的に簡単に対応できるものではないことは確かです.しかしそんな中でも技術的に試みる価値あることもあるかもしれませんので,この機会に少し考えてみました.
とりわけ一般総論的科目ではありがちなのですが,100人規模の講義だと学ぶためにこの場にいる特権と緊張感がとかく薄れてしまいがちです.そこでICカードリーダーなどを用いて電子的に出席状況を管理する,着席位置ごとに受講生IDをタグ付けし,教壇から即興的に名指しでの問いかけを可能にする,出欠席のみならず講義中の応答状況をも記録し,権限をもつ第3者に閲覧を許すことにする,などできれば,受講期間中の細やかな対応が可能となる(どうにもならなくなってからどうにかならないかということにはならなくなる)のではないでしょうか.
しかしやはりなにより,担当教員各々が魅力ある講義・実験・演習を実現するために日々地道な努力を続けることこそが王道なのでしょう.「学問に王道なし」とは前3世紀ユークリッドの言葉ですが,科学技術は進歩しても世の有り様は2千年来変わらないようです.そう考えると展望は明るいとは言えなさそうなのですが,変わらないようにみえるものを変える力をもつものが一般教養であり教育ですので,その場限りの反ユークリッド的な手管を追い求めるよりも,ユークリッド的な知性を身に着ける方が有意義であることを強く納得してもらわねばなりません.ということで話は堂々巡りです.結局,あちら側からこちら側に導く方法には地道に心に訴えつづける以外の王道はないようです.