【鈴木 雅子・学術情報部図書館情報課長】図書館の可能性(私見)

図書館の可能性(私見)
鈴木雅子(学術情報部図書館情報課長)

図書館の展望あるいは図書館職員の今後のあり方についての思いを書いてほしいとの依頼を受けました。はっきりと考えがまとまっているわけではなく、文章にも自信がありませんが、何か少しでもお伝えできればと思います。
みなさん、「大学図書館」には、どのようなイメージをお持ちでしょう?「静謐な空間」「本や雑誌がたくさんある場所」といった印象が一般的でしょうか。しかし、最近の大学図書館はそんなイメージを覆すように変化しつつあります。
ひとつは、学生の学習スタイルの変化への対応です。アクティブラーニングへの転換や主体的に考える力を持ちグローバルに活躍できる人材の育成が大学に求められています。学生の学習スタイルは、グループでディスカッションしたり力を合わせて成果物を完成させたりすることが多くなりました。そこで図書館には、静かに集中して勉強できる場所の他に、会話・議論ができる場所を用意しています。静岡大学附属図書館では、静岡本館5階のハーベストルーム、浜松分館2階のグループワークエリアとその周辺がこの場所にあたり、グループ学習だけでなくゼミや少人数の授業でも活用いただいています。また、大学教育センターによる「チューターズフロント」も試験期間中を中心にこれらの場所で開設され、大学院生が学生に勉強の分からないところ等を教えています。
このように図書館は「静謐な空間」だけではなくなりましたが、同時に、学生が他の学生の学びを目や耳にする機会が増えたのではないかと思います。図書館蔵書の活字の中からだけでなく図書館という空間の中からも知的好奇心が刺激され、能動的・自発的な学習が促進されることを期待します。また、学生と留学生との交流等により社会に求められるグローバルな人材が育つきっかけになることを期待します。そのために、学内の先生方や職員、学生とさらに連携・協力し、図書館を活気と知的魅力に満ちた場所にしたいと考えます。
図書館の大きな変化のふたつ目は、学術情報の変化への対応です。インターネットの登場により、国際的な学術雑誌は電子ジャーナル化し、文献へのアクセスの利便性が非常に高くなりました。結果、最近では図書館に置く紙の雑誌の増加はぐっと少なくなりましたが、電子ジャーナルや電子ブック、データベース等、電子的な資料も、みなさんが必要な資料にできるだけアクセスできるよう努めています。
インターネットの登場は、一方で、学術情報を自ら発信できるようにもなりました。図書館では約7年前から、静大の研究者が自身の研究成果を学術リポジトリSURE(Shizuoka University REpository)*1上で無料オンライン公開(オープンアクセスに)し、研究成果を多くの人に読んでもらえるようにするお手伝いを行っています。リポジトリの運用を通して図書館は、静大の先生方の研究活動について、論文著者としての側面を少し知ることができました。学生もそうでしょう。リポジトリにより大学の研究成果を広く公開することは、社会に対する説明責任や地域連携に寄与するとともに、学生への教育効果も期待できるのではないかと推察します。先生方のご協力を得て、本学学術リポジトリ収録コンテンツをもっともっと増やしていきたいと考えます。
今年度、図書館は「静岡大学附属図書館の使命」*2を策定しました。静岡大学の使命「教育」「研究」「社会連携」の下、図書館の使命として、「学習支援」「研究支援」「社会連携」そして「学術情報資源整備」を掲げています。静岡大学の発展の中で、図書館に何ができるかを考え実行していく力と意欲が職員には必要です。しかし、図書館単独でできることはごく限られています。学内の先生方、職員の方との連携・協働により、よりよい学習支援、研究支援、社会連携、学術情報資源整備を進めていきたいと考えます。今後いっそうのご協力をどうぞよろしくお願いいたします。

*1:http://ir.lib.shizuoka.ac.jp/
*2:http://www.lib.shizuoka.ac.jp/top/?mission