【栗田智子・就職支援課】静岡キャンパスでの「伴走型」就職支援

静岡キャンパスでの「伴走型」就職支援

就職支援課 特任職員 栗田智子

_筆者は継続的な個別就職支援の担当者として、平成25年6月に就職支援課に着任した。以来、静岡キャンパスにて「就職活動がうまく進まない」「公務員や教員採用試験が不採用となってしまい今後どうしようか」「進学希望だったが事情により就職に切り替えたい」「活動開始が遅れた」といった悩みを抱えている未内定の学部4年生・修士2年生や、未就職のまま卒業した者、就職後ほどなくして離退職した既卒者の支援に3年間携わってきた。これまでに筆者が対応した就職相談の実施状況と学生・既卒者の特徴をまとめ、報告したい。

_まず始めに、全学では「就職相談室」(学年不問)を実施しており、こちらでは7名の非常勤カウンセラーが日替わりで就職相談に対応しているが、この「就職相談室」と筆者が実施している継続的な個別就職支援との違いを表1にまとめた。
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_次に、表2は過去3年間に筆者が対応した相談件数及び人数(学部・研究科別)を、また図1は相談対応件数の月次推移を表したものである。

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_平成27年度の月次推移によると、公務員・教員希望から民間企業の就職活動への切り替えを検討し始める学生の相談により、7月(58件)に一回目の山を迎え、その後、夏休みが明けて進学希望からの切り替えや、10月1日(内定式)までに民間企業より内定を得られなかった学生の相談が加わる10月(84件)にピークを迎えている。そして、卒業までに内定を得たいという駆け込み需要から2月(43件)に相談件数が伸びていることも特徴である。尚、その年度の就職スケジュールによりピークの変動があり、平成27年度は企業による採用広報の解禁(企業説明会の開催、応募書類の提出、webテストの実施等)が3月、採用面接の解禁が8月であった。

_また、図2は「就職相談室」に於ける相談対応件数の月次推移を表したものである。
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_7月に山が来ている点は図1と共通しているが、図2では新4年生・修士2年生の就職活動開始直後である3月や4月にピークを迎えている点に於いて、図1とは相談のピークにずれが生じている。このことから、筆者の個別就職支援が、学生・既卒者が行き詰まりを覚えた際の受け皿となっていることが窺える。学生・既卒者には困ったことが生じた時に備えて早めに相談先を見つけておくことの必要性と、その一つとして筆者が取り組んでいる個別就職支援が利用できることを一層周知していく必要があろう。

_ところで、平成27年度は83名(実人数)の学生・既卒者を支援した結果、図3の通り85.5%にあたる71名から内定報告を受けた。
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_内定報告者にはアンケートを書いて貰っている。そこで筆者の個別就職支援で役に立ったと思うものは何か(複数回答可)を調査したところ、結果は図4の通りであった。
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_面接や応募書類のアドバイス等といった具体的な支援の割合が最も高くなるのではないかと予想していたが、「就活に関する悩み相談」が最多で全体の3割を占めている。

_更に、筆者との相談で印象に残っていることや思い出などについて自由に記載してもらった結果、以下のようなコメントがあった。

「どんなに小さなことでも、親身になって相談に乗ってくださったので、メンタル面的にも大きな支えになりました。」
「落ち込んでいる時に、ずっと話を聞いてくださり、はげましてくださったので、次へと気持ちを切りかえることができました。」
「就活に関することだけでなく、個人的な様々な悩みにも親身に相談にのっていただきとても感謝しています。」
「提出書類の書き方のアドバイスだけでなく、就職活動の不安や企業の面接時に感じたこと(グチなど)を親身になって聞いていただけたことで、自分だけで色々抱え込まずに就職活動を進めることができました。」
「趣味の話や日常のことも聞いていただけたことがとても嬉しかったです。」

_これらのコメントから、悩んでいる学生・既卒者はとにかく親身になって話を聴いて欲しい気持ちでいることを改めて感じた。そして、就職活動に悩んでいる人は、就職活動以外のこと(親や友人との関係性、単位取得や卒業研究の進捗状況、等)に関しても悩んでいるケースが多いため、そういった面でも総合的なケアが必要であることも実感している。また、「就職支援課の人なのに色々な話題に耳を傾けてくれる」といった点に新鮮さを感じる人もいるようである。

_筆者のもとへ相談に来る学生・既卒者は、何をどうしたら良いかわからない、自分だけ就職先が決まっておらず周囲から取り残された感じがする、応募書類や面接のネタが思いつかない、等により自信を無くし落ち込んだ状態で訪ねてくるケースが殆どである。中には相談中に泣いてしまう者もいるが、そのような場合は無理に面談を進めようとせず、気分転換に当該学生・既卒者の趣味や好きなことについて楽しく話して終えることがある。時には愚痴を1時間ぐらいひたすら聴いていることもある。これらは一見遠回りのように思えるかもしれないが、そうすると学生・既卒者は気持ちの整理がついてスッキリするようで笑顔が戻り、気持ちを切り替えて活動を続けていこうという前向きさを取り戻すようだ。これは、筆者の個別就職支援が、学生・既卒者が内定を得るまでの継続的な「伴走型支援」を特色としているからこそ出来る方法であろう。

_静岡大学の学生・既卒者は一時的に落ち込んだとしても、自信とやる気を取り戻しさえすれば就職先を自分で決められる能力が備わっている。そして、筆者は学生・既卒者が内に秘めている力を信じ、本人の笑顔や意欲、そして魅力を充分に引き出すことが筆者の役割であると考えている。これから社会へ巣立つ若者を、就職支援課の特任職員として、またキャリアコンサルタントとしての客観的な視点を持って指導しつつ、時には学生・既卒者と一緒になって喜んだり悩みを共有したりしながら、今後も一人ひとりの希望や気持ちに寄り添った支援を継続していく所存である。