2013年度の教職志望者(全学教職課程)への支援
―静岡キャンパスの取り組み
松尾 由希子(大学教育センター・講師)
大学教育センターでは、就職支援課と協力して、主に人文社会科学部・理学部・農学部の教職希望者の支援を行なってきた。その内容を大きく分類すると、1教員採用試験に向けた支援、2教育実習に向けた支援の2種類になる。2013年度の支援内容と今後の課題について、かんたんにまとめたい。
1 教員採用試験に向けた支援
実際に行なっている支援と日程は、以下のとおりである。
全学教職課程で行なっている教員採用試験に向けた支援は、主に高校の教員希望者を中心に、3年生から実施している。人文社会科学部や理学部の学生で、中学校の教員を希望している学生については、教育学部で行なっているガイダンスに参加させてもらっている。講師は、静岡県教育委員会学校人事課、教育学部同窓会、就職支援課の池谷先生である。学部の3年生時点では、教職という仕事の内容がわからず進路に悩む学生もいるため、教育委員会の先生が教職という仕事について丁寧に説明してくださっている。教員採用試験を受験する学年になると、主に面接試験に向けて、教育学部同窓会の先生が心構えについて説明してくださり、その内容をふまえて就職支援課の池谷先生が指導してくださる。池谷先生の面接講座の内容については、「教員採用試験 二次試験対策講座 所感」(静岡大学大学教育センターHP 「ニュースレター」2013年9月17日掲載)を参照されたい。
(1)静岡県教員採用試験(高等学校)ガイダンス(11月下旬)
内容:教員という仕事について、今年度の教員採用試験状況、静岡県の求める教師像など
講師:静岡県教育委員会学校人事課
対象:来年度教員採用試験を受験予定の学生。受験を迷っている学生。
対象学部:人文社会科学部、理学部、農学部、教育学部
(2)静岡県教員採用選考試験(高等学校)のガイダンス(4月半ば)
内容:静岡県のめざす教師像、昨年度の教員採用試験状況など
講師:静岡県教育委員会学校人事課
対象:今年度教員採用試験を受験予定の学生
対象学部:人文社会科学部、理学部、農学部、教育学部
(3)教員採用試験1次面接試験に向けた心構え(5月半ば)
内容:過去の面接試験(内容、形式など)、面接試験までの心構えなど。主に講演。
講師:静岡大学教育学部同窓会
対象:今年度教員採用試験(中高)を受験予定の学生
対象学部:人文社会科学部、理学部、農学部
(4)教員採用試験1次面接試験対策講座(5月下旬、6月下旬)
内容:上記の「教員採用試験1次面接に向けた心構え」をふまえた実地練習
講師:池谷 昌樹先生(就職支援課)
対象:今年度教員採用試験(中高)を受験予定の学生
対象学部:人文社会科学部、理学部、農学部
(5)教員採用試験2次面接試験に向けた心構え(7月半ば)
内容:過去の面接試験(内容、方法など)など。主に講演。
講師:静岡大学教育学部同窓会
対象:今年度教員採用試験(中高)を受験予定の学生
対象学部:人文社会科学部、理学部、農学部
(6)教員採用試験2次面接対策講座(8月上旬)
内容:上記の「教員採用試験2次面接試験に向けた心構え」をふまえた実地練習
講師:池谷 昌樹先生(就職支援課)
対象:今年度教員採用試験(中高)を受験予定の学生
対象学部:人文社会科学部、理学部、農学部
2 教育実習に向けた支援
人文社会科学部は3年生から、理学部・農学部は4年次に教育実習に行く。以前より、教育実習前になると、学校でのふるまいや授業準備について不安をおぼえる学生から相談を受けていた。そのため、今年度から教育実習に向けたガイダンスを始めた。ガイダンスの内容や日程などについては、以下のとおりである。今年度は5月に行なったが、5月から教育実習に行く学生もいるため、来年度は4月下旬開催予定である。
(1)教育実習に向けた心構え(5月上旬)
内容:実習中のスケジュール、学校での「気働き」、自己紹介を考えてみるなど
講師:池谷 昌樹先生(就職支援課)
対象:今年度教育実習に行く学生。3年生、4年生
対象学部:人文社会科学部、理学部、農学部
上記のガイダンスのほかに、今年度は教育実習録の改訂も行なった。教育実習録について、以前より学生から「使いづらい」「実習校の先生から教育実習録について注意を受けた」などの声がよせられており、改訂にふみきった。人文社会科学部・理学部・農学部の学務係に事情をきくと、各学部は個別に教育実習録を作っていた。教育実習録が学部によって異なることで、実習校から「同じ大学なのだから実習録を統一してほしい」という要望も寄せられていたそうだ。人文社会科学部・理学部・農学部の学務係と相談した結果、統一した教育実習録を作ることになった。3学部の教育実習録を集め、学生の使用状況、現状の実習録における使いやすい点・使いにくい点、新たに追加する内容、実習校からの要望などを出して、事務(3学部の学務係)と教員(松尾)で話し合った。検討した内容をとりまとめ、新しい教育実習録を作成した。新しい教育実習録については、各学部の教務委員会の承認を経たうえで、順次使用していくことになる。
_教員採用試験及び教育実習のガイダンスや講座については、学生以外にも学部の学務係が自主的に出席することも多く(農学部学務係・増田久美子「教職を目指す学生に目を向けて―静岡県教員採用試験ガイダンス」静岡大学大学教育センターHP「ニュースレター」2013年1月24日掲載記事参照)、教員と事務と就職支援課で情報を共有しながら学生支援にあたっている。学生支援の内容については、直接に教員によせられた学生の要望を中心にしながら構成するが(松尾由希子「教職志望者の実態とニーズ―-2012年度4月教採ガイダンス(全学)のアンケートより-」静岡大学大学教育センターHP「ニュースレター」2012年5月1日掲載記事参照)、学部の学務係からの情報も欠かせない。学生はさまざまなニーズをもっているが、教員に話す内容と職員に話す内容が異なることもある。また、学務係が個別に把握する情報もあり、効果的な学生支援のためには教職員の双方がコミュニケーションをとり、協力していくことが重要である。学務係がもつ情報として、例えば学生の進路状況がある。学生の実際の進路状況をふまえた教職支援計画をたてなくてはいけないと思いながらも、学生の進路状況をどのように把握したらよいのかがわからず、昨年度、理学部学務係の世古さんに相談した。すると、私が知りたい情報項目(進路状況や教職支援へのニーズなど)をききとり質問紙を作り、教員免許取得予定者のガイダンスで配布し、結果をとりまとめて教えてくれた。その情報は、ガイダンスの内容にも反映させて、今年度の教職支援にも活かされた。世古さんが今年度行なった調査については「2013年度教職志望者の進路の実態と大学に必要とされる就職支援―理学部生の教員採用試験に関するアンケートより」(静岡大学大学教育センターHP「ニュースレター」2014年1月13日掲載)に詳しい。来年度は、人文社会科学部学務係の協力で同様の調査を人文社会科学部でも行なう予定である。
3 2013年度の教職志望者支援の課題と2014年度の支援に向けて
今年度は、新たに教育実習生への支援も始めながら、これまで行なってきた教員採用試験に向けた支援についても学生や学務係の意見を参考にして充実させてきた。来年度の支援内容について、理学部学務係の質問紙調査などを参考にしながら、就職支援課の池谷先生と話を進めているところである。
1つは、面接試験対策講座の内容である。今年度の4年生の一部は、教育学部の教職支援室の先生方の支援も受けていた。そこで、他学部生と知り合いになり、講座以外の日にも集まり、勉強会や面接練習を自主的に行なっていたという。学生から「同じ目標をもつ仲間がいて、一緒に勉強したり相談できたりしたことで試験をのりきることができた」という話を直接きき、同様の内容が理学部のアンケートにも現れていたため、来年度は面接講座の内容に「仲間づくり」の要素も入れることを考えている。当然のことであるが、教育学部の教員志望者は多く、必要な時に協力しながら学んでいる。しかし、教育学部以外の学部では教員志望者数が少ないために、多くの学生が個別に学んでいる。一人で採用試験の勉強や面接練習に臨むことは悪いことではないが、場合によっては仲間と協力して行なったほうが効果的である。
2つは、教育実習に向けた支援の充実である。人文社会科学部では、3年生の5月に実習に行く学生もおり、毎年のように不安を覚えた学生が相談にくる。今年度は池谷先生のガイダンスによって、相談にくる学生の数は減ったが「先輩に直接話をきけたら」という声もある。そのため、すでに教育実習を終えた学生(来年度の4年生)に3年生の実習生の相談にのってもらおうと考えている。