大学コンソーシアム京都「第17回FDフォーラム」に参加して
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2012年3月3日~4日に京都産業大学を会場として開催された第19回FDフォーラムに参加させていただきました。今回のフォーラムでは「大学におけるキャリア教育を考える ~企業が求める人材って、大学で育成しないとだめ?~ 」を総合テーマに、1日目には全体シンポジウム、2日目は4つのミニシンポジウムと10の分科会が開催されました。
教務担当としてFD(Faculty Development)の現状と取り組みを学ぶことで、授業改善への取り組みを知り業務に広い視野を持って実務にのぞむことができるようになるのではないかと考え、今回のフォーラムへの参加を志望しました。
シンポジスト
児美川 孝一郎氏 (法政大学 キャリアデザイン学部 教授)
深澤 晶久 氏 (株式会社資生堂 人事部人材開発室長 兼 キャリアデザインセンター長 兼 グローバル人事グループリーダー)
松高 政 氏 (京都産業大学 経営学部 准教授)指定討論者
松本 隆 氏(株式会社ベネッセコーポレーション 大学事業部事業開発課 課長)
コーディネーター
村上 正行 氏 (京都外国語大学 マルチメディア教育研究センター 准教授)
1000人超が参加した全体シンポジウムではキャリア教育がメインテーマとして設定されました。現代の大学には社会に人材を送りだす役割が期待されていますが、企業や社会の求める人材、いわゆる即戦力を育てることが目的ではなく、自立して生きる力をもった人間、批判的リテラシーを持った人間を育てることが大学におけるキャリア教育の目指すものだということがまず確認されました。
企業の人事担当者からの企業内キャリア教育の現状や京都産業大学のコーオプ教育の実践など、大学内外からの視点での発表には学ぶところが多くありました。キャリア教育については就職支援的な面が強調されがちになっていますが、それにとどまらずFDや学習とのバランスをどのように取っていくかというのがこれからの課題です。学習との相乗効果を高めるためには学部の専門教育との繋がりを強くし、埋め戻していくことが大学におけるキャリア教育の実現には不可欠であるという話が強く印象に残りました。また、「勉強しない大学生」についても触れられ、学生の学力や学習意欲が多様化する中でキャリア教育はどのような体制をとっていくべきかというテーマには参加者からも強い関心が寄せられ活発なディスカッションが行われていました。
【ミニシンポジウム「わかりにくいぞ今のFD」】3月4日(日)
FDの現状と基本に立ち返る内容についてのミニシンポジウムでは大学教員はもちろんのこと、学生や職員の参加が目立ちました。始終和やかで活発な雰囲気のなかで会がすすみ、まさに「わかりにくい」と感じていたFDについて、身近に感じるようになりました。
FDというと革新的な取り組みや一過性の企画・イベントが注目を集めがちですが、日常のFDの実践こそが重要であるというのがパネリスト共通の意見です。FDに対する温度差はいまだに存在するものの、「ハーバード白熱教室」の影響で変化した教員の実例やシラバスの質を高める取り組みが紹介されるなど、FDに熱心でない教員に対しても積極的、継続的に働きかけていくことの重要性を強く意識させられる内容の講演が続きました。また、それを受けたパネルディスカッション・質疑応答では学生や職員それぞれの立場からFDに積極的に関わっていきたいという発言が多く、組織的な授業改善にむけて活発な議論が交わされました。
【最後に】
FDの範囲の広さを感じるとともに、課題の多様さ、複雑さを印象付けるシンポジウムではありましたが、日常での継続的な取り組みが重要であるということを強く感じました。全学教育の教務担当として教員が授業をしやすい環境を作ることで活発な授業の運営を支えられるよう、今回学んだことを業務に生かしていきたいと考えています。早い段階でこのようなフォーラムに参加させていただくことができたことはとても有意義な経験となりました。最後になりますが快く送り出してくださいました教務課の皆様と大学教育センターの先生方に感謝いたします。ありがとうございました。