大学教育学会・2011年度・課題研究集会に参加して
(大学教育センター教授 佐藤 龍子)
_2011年11月26日、27日山形市中央公民館で行われた大学教育学会・2011年度・課題研究集会に参加した。初日の基調講演は山形大学山本陽史氏の「東日本大震災と大学」、その後、開催校シンポジウムとして「学生主体型授業の可能性」があった。2日目は「実践的な教養教育を求めて」と「学生支援で学生はどのように変容しうるのかーボランティア活動支援からー」である。
_特に印象に残ったのは「学生主体型授業の可能性」の北海道医療大学の阿部和厚氏の「メディカルカフェをつくる」である。阿部先生は北海道大学医学部で解剖学を教えていた方で、平成4年から北大医学部で2泊3日のグループ学習・参加者主体型FDを主導。日本におけるFDの草分け的存在である。
_「メディカルカフェをつくる」は札幌医科大学と北海道医療大学の合同授業でGPにも採択されてしる。担当教員は両大学の10名ほどである。この授業は、患者―医療者、医療者―医療者、医療者―社会間の密接な双方向コミュニケーション能力を獲得することを目標とし、手段として「カフェ」企画を実施することを特色としている。学生は「メディカル社」という仮想イベント会社の社員として実際の仕事をするというものである。
_授業内容についてPPTや写真をもとに詳しい説明があった。アナウンサーや演劇指導者を講師として招き、インタビュー法、発表法、ことばづかい・話し方、演技法まで学ぶ。企画立案、広報、ゲスト招聘、イベントの運営方法などイベント会社を理解し、役割分担を綿密に行い、社会的に仕事をする基本を学ぶ。
_当日は、紀伊国屋書店(札幌)のロビーを借りて、100人ほどの市民が集まるという。リハーサルも行い、設営からはじまり当日の運営、片付けまですべて学生たちが行う。メディカルカフェは平成20年から現在まで続いている。
_阿部先生はFD関係では著名人で、私もかねてからお名前を存じ上げていたし、文献も読んでいたが、今回の発表で取り組みをリアルに知ることができ、とても有意義だった。医学部の方がこのような授業を企画し、実施していることに驚くとともに、学生主体型授業をもっと多様な視点で開拓していかなくては…と思いながら帰路についた。