【大高 弘士・学務部学務部長】着任のご挨拶
着任のご挨拶
本年4月から静岡大学学務部長として着任しました大高弘士です。よろしくお願いいたします。前任の弘前大学でも学務部を担当しておりました。弘前大学は国立大学の中でも数少ない県庁所在地に置かれていない大学で,人文,教育,医,理工,農学生命の5学部と7研究科を設置し,学生数は約8,000名の中規模総合大学です。また,弘前市は新幹線が通っていない(将来においても)ので決して交通の便がよいとは言えませんが,津軽富士と呼ばれる岩木山を臨むことができるなど風光明媚なところです。
静岡大学では,前任と同様,学務部を担当させていただきますが,「学生第一,現場主義」をモットーに務めていきたいと思います。
私はこれまでに5つの大学で大学職員として勤務してまいりましたが,平成16年の国立大学の法人化以降,大学職員の役割が補佐的なものから教員以外の大学の構成員である経営のプロとしての役割に変わらなければならないと強く感じます。
日本の大学進学率の推移は,1990年代に25%でしたが,2010年に50%を超えました。これに伴って大学に求められる機能が変わり評価制度も加わったことにより職員の役割が大きく変化してきました。大学はこれまで以上に教育重視に転換し,進学率の上昇に伴う学生の多様化など,これらのことが大学職員の業務の高度化,守備範囲の拡大を進めることになっています。
このような状況において,大学職員の役割は,教育の質の向上の取組について,予算,人員,施設設備等の条件を整備し,教学と経営の連携を促進することであろうと思います。
また,大学職員は,学内と学外の接点で「通訳」の役割も担っています。
東京女子大学の初代学長でもある新渡戸稲造博士の『自警録』には,「通訳」に関して次のような話が載っています。
幕末にある殿様が登城の際,外国人が乗馬で行列の前を横切った。殿様は立腹し通訳を召して,外国人の無礼を糺しその場で切り捨てるよう命じた。通訳は外国人を呼び止め,「我が主人である殿様が貴方の西洋の馬の鞍を珍しがって拝見したいと申しておる。駕籠の前で見せていただけないか。」外国人が鞍を見せるために馬を降り脱帽して挨拶をすると,通訳は「あのように詫びております。命だけはお許しを」と取りなすと,殿様はゆるしてつかわせと言われた。通訳は外国人に「殿が礼を申しております。」と伝えた。外国人は大名と親しく話したのは初めてで喜び何度も脱帽して立ち去った。「あのように深くわびております。」と通訳が告げると大名は満足した。
私は霞ヶ関での様々な調整にも携わった経験から,このような調整役が大学職員としても重要な仕事ではないかと思います。ただ,何のためにする仕事なのかは,はっきり自覚する必要があります。
今後,大学職員の役割は専門職化が求められることになります。大学の運営に関する執行,管理,マネジメント機能とともに,教育的援助・学生サービス機能として教育を教授する教員と学生を円滑に繋ぐ役割を果たすことになります。
静岡大学の職員の多くがこのような意識を持っていただくことができるよう微力ながら務めたいと思います。