教育実習準備講座で育まれる3年生と4年生の学び合い
教育実習準備講座で育まれる3年生と4年生の学び合い
教職センターでは,人文社会科学部,農学部,理学部,情報学部,工学部に所属しながら教職課程を履修する学生さんに向けて,授業やさまざまな支援を行っています。各学部の専門を学びながら,中学校や高校の教員を目指す学生さんをサポートするのが教職センターの役割です。
私が教職センターに着任した2018年に,教育実習を終えた4年生に対して実習に関するアンケートを実施しました。そこで多く寄せられたのが,授業づくりに関する不安や実践経験の不足に対する声でした。具体的な記述を以下にいくつか紹介します。
「指導案の作成法について,もっと詳しく学んでおきたかった」
「模擬授業もしたことがないのに,急に授業を任されて困った」
「授業案,板書計画などを作った経験が足りていなかった」
「授業をする経験を積める授業内容にしてほしい」
「実習録に何を書けばいいのか,いまいち分からなかった」
教育学部の学生と比べて,開放制教職課程で学ぶ学生は,各学部の専門科目の履修で忙しく,教職に割ける時間が限られます。現職教員から学校現場の実情を聞いたり,模擬授業を体験する機会が,どうしても不足しがちです。
こうした声に応えたいという思いから,教職センターでは「教育実習準備講座」を立ち上げました。この講座は,教育実習を控えた3年生が,授業案の書き方や模擬授業を体験しながら学べる自主的勉強会です。春休み中の2月末から3月にかけて実施しており,先輩である4年生が助言者として参加してくれています。3年生が作成した授業案や模擬授業に対し,4年生が自身の教育実習経験にもとづいて実践的な助言をしてくれます。さらに,教員採用試験に合格した4年生からは,筆記試験や面接対策についてもアドバイスをもらうことができる場になっています。
この講座で行われる模擬授業は,学生同士で教師役と生徒役に分かれて行います。実際の中高生を対象とした授業ではないため,教育実習中とは緊張感も異なりますが,人前に立って1コマ分の模擬授業を行うという経験は,3年生にとって大きな自信につながります。
この講座に参加した学生さんからは,次のような感想が寄せられました。
『教員採用試験に合格した先輩方から教員採用試験や教育実習についてアドバイスをいただき,とても参考になりました。また,一緒に受講したメンバーで教員採用試験に向けた勉強会をするようになりました。一緒に勉強する人を見つけたい人は,この講座をきっかけに仲間を見つけてみてもいいと思います』
3年生と4年生の縦のつながりだけでなく,教員採用試験に向けて一緒に勉強する横のつながりも生まれているようです。この講座に参加した3年生の多くは翌年,今度は助言者として後輩の指導に携わってくれています。
この教育実習準備講座の取り組みと評価については,実践論文(金子・松尾,2024)にまとめられていますので,関心のある方はご一読ください。
さて,5月に入り,今年も4年生が教育実習に臨む時期となりました。学校現場で戸惑うこともあると思います。失敗を恐れず,多くのことを学んできてほしいと願っています。
後期には,教職の総まとめとして教職実践演習が始まります。教職実践演習の第1回目では,教育実習の振り返りから始める予定です。教育実習を通して4年生が実践できたことや学んだことについて,報告を聞けることを楽しみにしています。
(実践論文)
金子泰之・松尾由希子 2024 開放制教職課程学生の教育実習に対する不安の背景とその解消に向けた取り組み:教育実習に向けた実践力向上をめざす講座とそれに対する学生の評価 静岡大学教育研究,20,57-71.
(文責:教職センター 金子泰之)