【松野和子、髙瀬祐子・大学教育センター】TEAPセミナーに参加して
TEAPセミナーに参加して
松野和子・髙瀬祐子(大学教育センター)
2014年3月8日に上智大学で開催されたTEAPセミナー(「大学入試が変わる―大学入試改革と外部検定試験の活用―」)に参加した。TEAPとは、”Test of English for Academic Purposes”の略で、「大学で学習・研究する際に必要とされるアカデミックな場面での英語運用力(英語で資料や文献を読む、英語で講義を受ける、英語で意見を述べる、英語で文章を書くなど)」を測る試験である(TEAPパンフレット, 2014, p.1)。セミナーでは、2013年12月に文部科学省が発表した英語教育改革実施計画の概要に始まり、TEAPの背後にある教育理念・言語習得理論、TEAPの具体的なあらましが統合的に説明された。また、簡単に比べられるものではないと前置きがあった上で、英語に関わる試験(TEAP、英検、CEFR、センター試験、GTEC、IELTS、TOEFL、TOEIC)のレベル関係についての説明もあった。
試験は、評価の対象となる母集団の「身につけることになっている知識や技能・能力」に応じて、その内容と形式が決定される。しかしながら、実際には、「身につけてもらいたい力」と内容や形式が合致していない試験がある。この場合、力が身についていても、あるべき評価が与えられない。ある受験者は「良い評価を得たい。それでは、この試験に対しては何をすれば良い評価が得られるだろうか」と考え始めるかもしれない(試験で良い評価を得ること自体が学習する目的となっていることについては検討の余地があるが、この点については今回の話では置いておく)。「身につけてもらいたい力」と内容や形式が合致していない試験では、身につけてもらいたい力とは別の「試験で良い評価が得られる学習」を行うようになるかもしれない。それは、「身につけるべき力」の学習の代わりに「試験で良い評価が得られる学習」に時間が割かれることを意味し、身につけるべき力の学習を妨げる。一方、「身につけてもらいたい力」と試験内容や形式が合致している場合、学習の結果としてそれに応じた評価が得られ、試験のための学習をすることが「身につけてもらいたい力」を伸ばす学習にもなっている。「身につけてもらいたい力」と試験内容や形式が合致している場合、「身につけてもらいたい力」を介して、試験と学習が双方向に結びつくのが分かる。本校の全学英語教育でも単位認定や授業評価基準に外部検定試験を取り入れている。試験という面から学生の学びを支援する際には、その試験が測っている力やレベルなど、試験の特性を検討し続け、試験を適切に実施する重要性を絶えず念頭に置いていきたい。
学生のみなさん、共通の下地としての英語力に加え、その試験がどのような力(例: アカデミックな場面での英語運用力)を測る試験なのかを把握し、その力が自分にどれくらいあるのかを知る1つの手段として、試験は有益な機会です。試験を通して自分の学びを見直してみてください。伸びを確認することで、これまで行ってきた努力や活用してきた学習方法に自信を持つかもしれません。または、学習がうまくいっていないことに気づき、学習方法を修正したり、学習姿勢を反省したりする契機になるかもしれません。自分の現在の力や得意な点・苦手な点を見直して、どのような目標を次に設定しますか。その目標を達成するためには何をどのように学ぶ必要がありますか。試験を終着点とせず、次の学習に活かしていきましょう。