実践的指導力を育成する教員養成の取り組みについて
実践的指導力を育成する教員養成の取り組みについて
中村真二
教職センターに着任して4年目となりました特任教授の中村真二です。
静岡県内の高校での教員や管理職の経験、静岡県総合教育センターで教員研修を担当した経験などを生かし、実践的指導力のある教員の養成を目指して「教職入門」や「教育実習事前・事後指導」「スクールインターンシップ」などの科目を担当しています。
ここではその取り組みの一部をご紹介します。
(1)教員になった静岡大学卒業生の実体験を聴く取り組み
「教職入門」では教員の職務内容、教育法規などを理論的に理解するだけでなく、実際に教員になった静岡大学の卒業生の話を伺い、実際の仕事の内容、教職の魅力、やりがいを知ることで、教員になることへの意欲を高める授業を行っています。
高校教員になって3年目の卒業生と9年目の卒業生に、今までの教員体験を後輩たちへ伝えるビデオメッセージを作成してもらいました。学生はビデオを視聴することで、教育現場で活躍する先輩たちのいきいきとした日常の姿を知ることができる機会となっています。また、昨年度は静岡県の理科の高校教員として新規採用になったばかりの卒業生に、「教職入門」の授業において講話をお願いしました。学生たちは教員になったばかりのやる気に満ち溢れた先輩の話を聴くことで、実際に教員になることへのイメージをより具体的に抱くことができました。この実践は昨年度,実践論文として公刊されました(中村・金子・堀江,2026)。
(2)電子黒板などのICTを利用した模擬授業の実施
「教育実習事前指導」では、教育実習に行くにあたり、教育実習の目的や心得を理解させるとともに、授業案の作成方法などを指導しています。
指導をしている中で、学生たちの中には、教育実習で実際に授業をうまくできるか不安を抱いている学生が多いことがわかりました。また、学生が高校を卒業してから、学校のICT化が急速に進み、新しいICT環境を活用した授業を行う自信がないと感じている学生が多いこともわかりました。
そうした学生の不安を取り除くため、教育実習の事前指導として4名程度の小グループを作り、グループごとにICTを活用した模擬授業を行うことにしました。実際の学校現場に近い教室環境を再現するために、大学にお願いして2つの教室に計4台の電子黒板を設置していただきました。学生に電子黒板の特徴や利用の仕方を説明した後、実際に模擬授業で電子黒板を活用してもらいました。初めて電子黒板に触れる学生が多く、最初はうまく操作できなかった学生が多くいましたが、しだいに慣れ、模擬授業で活用できるようになりました。また、グループごとにTeamsのクラスを作成し、各自が行う模擬授業を録画することで、後で自分の模擬授業を動画で振り返ることができるようにしました。春休みにはタブレットを使った学習支援授業アプリの活用講座を希望者に実施しました。授業教材の一斉配信の方法や、生徒の意見を集約して提示する方法など、協働学習を効率よく行える方法を学習し、ICTを効率よく授業に活用できる実践的な指導力を高めることができました。
(3)実践的な指導力を育成するスクールインターンシップの実施
教職センターでは専修免許を取得し教員を志望する修士課程の院生に対してスクールインターンシップ(略称:SIS)を実施しています。昨年度は7名の院生が参加しました。
かつて教育学研究科以外の研究科の院生は、高度な専門科目を学修することで専修免許を取得することができても、専門知識を生かした教職の実践経験を積む機会がありませんでした。そこで教職センターでは、教育学研究科以外の研究科で専修免許を取得して教員を目指している院生に対して、学校現場で実践的な指導力を高めることができるように10年ほど前からスクールインターンシップを実施しています。
毎年、スクールインターンシップを希望する院生に対して個別に面談を行い、院生が学校現場で実践して身につけたい指導力を明確にさせるとともに、院生の希望を聞きながら実施校を検討しています。最終的に実施校となった学校と日程、内容を調整した上で、スクールインターンシップを実施しています。
昨年度はスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受け先進的な理科・数学教育に取り組んでいる高校、多様な生徒の個性を尊重し様々な科目から授業を選択できる単位制高校、総合的な探究の時間で継続的に防災学習に取り組んでいる総合学科の高校など、院生が取り組みたい課題に応じて、様々な学校でスクールインターンシップが実施されました。
スクールインターンシップは、教育実習とは異なり、身につけたい指導力を明確にした意欲の高い院生が毎年参加しています。スクールインターンシップの様子を見に実施校を訪問した際、実施校の先生方が院生を、教員免許を有する一人の教員として接し、授業の指導方法について積極的に意見交換している様子を見ることができました。15日間にわたる長期のスクールインターンシップは、教育実習では得られなかった多くの経験を得ることができ、実践的な指導力を高める貴重な機会となっています。
引用文献
中村真二・金子泰之・堀江隼世(2026). 新規採用教員の講話が開放制教職課程で学ぶ学生の教職理解に与える影響–教員1年目の等身大の語りを活用した授業実践– 静岡大学教育実践支援センター紀要36,252−259.

