【須藤 智・大学教育センター】スマホ・ガラケー対応Webクリッカーの紹介
近年高等教育の授業改善において,学生の主体的な学びを引き出す学習形態である「アクティブラーニング」の必要性が指摘されている。アクティブラーニングのための様々な手法・形態が提案されているが,大講義でアクティブラーニングを導入するためにICTツールである「クリッカー」が注目されている。
ICTツールを利用せず,大講義で学生と教員の双方向性を高める方法として,発問,コメントペーパー,発表機会を設定するなど,様々なアイディアが考えられる。しかし,これらの方法の問題点として,大人数すべての学生に対して,その授業中に双方向的なチャネルを確保することは必ずしも容易ではないという点が考えられる。クリッカーは,授業中にすべての学生に対してリモコン型の回答用端末を配布し,教員の発問に対して選択肢で回答することを求めることができる。回答が選択肢型と限られてはしまうが,学生一人一人に教員の発問に対しての回答を求めることができる。場合によってはその回答は個人と紐付けられ記録しておくことも可能である。ICTであるクリッカーを使う事で,大講義において伝達できる情報は限られるがコミュニケーションのチャネルは確保することができるのである。
本学でもリモコン型のクリッカーを2キャンパスで導入し,授業や研修会等で利用してきた。学生からは,授業中にクリッカーを利用することで,動機付けが高まり,授業へ積極的に参加できる,というようなポジティブな感想があり,おおむね好評であると考えられる。しかし,教員側からは,(1)リモコン型の端末を配布・回収する手間がかかる,(2)選択肢型だけでなく,自由記述の回答データも得たい,(3)専用ソフトウェアが不便,(4)単に選択肢を見せて回答させるだけのシステムでもよい,などの感想があった。
これらの感想を参考に,筆者は専用ソフトウェアを用いないブラウザ利用型のWeb上で利用できるクリッカーシステムを開発した。このWebシステムは,(1)教員はWebブラウザだけで利用できる,(2)学生は個人のガラケー・スマートフォンを回答端末として利用できる,(3)回答結果と個人の紐付けはしない,(4) 選択肢と自由記述の2つの回答に対応しているという特徴を持たせることとした。平成26年度の4月に1年生を対象とした携帯端末の保有状況の調査によると,ガラケー・スマートフォンの所有率はmほぼ100%であり,学生個人の情報端末を回答端末とすることについては,現時点ではあまり問題がないように思われる(パケット代の問題はあるが)。教員側の設備としても,本学の大講義対応の教室には無線LANの設備が普及し,授業中に教員がブラウザを使う事も問題ないように思われる。さらにWebシステム化したことで,教室という場にとらわれずこのシステムを利用することができる。特に,自由記述については出席カード的な利用も可能にしたので,フィールドワークの際などの出席システムとしても利用できると考えられる。
似たような機能を持ったWebクリッカーシステムは他社から有料で製品化されていたりするが高価である。しかし,さほど,高度なプログラミング技術が無くても作成できるレベルのシステムであったため今回独自に作成することとした。このシステムは,CakePHP+SQLを利用して作成されており,簡単に個人のサーバに導入することができる。今後は,このシステムのソースについてはオープンソースとして,発展的に活用できるようにしたいと考えている。
システムの詳細,利用方法については,下記のURLに詳細を記した。クリッカーを利用したいと考えているが,手間がかかりそうと感じて,なかなか手が出なかった方々にはお勧めである。是非,ご利用頂き,ICTを活用した授業改善を進めて欲しいと考えている。(文責:須藤智)
URL: http://www.sutolab.net/?page_id=251