【池谷昌樹・学生支援センター】教育実習の心がまえ 講座報告
教育実習の心がまえ 講座報告
池谷昌樹(学生支援センター・非常勤講師)
さる4月24日木曜日、教育支援課・学生支援センター主催の「教育実習に向けた心がまえ」講座が開催されました。今年度も担当させていただきましたので、所感と思いを交えて様子をご報告いたします。
◎どの学部にもいる、教育実習生
講座は教育学部以外の学生対象で、参加28名。人文社会8名、理学9名、農学11名とどの学部からも参加がありました。男子13名女子15名とほぼ半々。1つの分野を専門的に学びながら教職を選択肢に考えている学生が(数は少ないかも知れませんが)どの学部にも偏りなくいることにうれしくなりました。多くが4年生でしたが、院2年生から1名、3年生も6名参加しました。
当日参加が3名あったことや「どうしても時間が合わないので資料だけでも・・」とレジュメを持ち帰った学生が2名いたことで、うれしい気持ちと潜在的な受講希望者がいたかもしれないという気持ちが同時にわきました。アンケートによれば、掲示や教職員から講座の情報を得た学生が90%とのこと。21世紀の学生イメージより“旧式”な情報受信形態です。webやメールに対して、多量の情報に溺れないよう自己防衛本能が働いているのでしょうか。掲示・人づての復権があるかもしれません。
◎学生の気持ちと学校現場をつなぐ
心地よい緊張感とスーツに包まれた学生たち。
実習が楽しみな気持ちとうまくやっていけるかという気持ち、教職への希望と自分に務まるか・合っているかという不安、相反する気持ちがない交ぜになっていることでしょう。教育実習受け入れにあたって採用試験受検を条件に課す学校があるようです。一般企業の就活について友人から話を聞いているでしょうから、不安になるなという方が無理です。
学生には、
・迷っていてもいい。実習を通してあなたの方向が決まればいい。
・しかし、学校ではあなたも「先生」。学校では「教師になるぞ」と自分に言い聞かせて。
と伝えました。学校現場には、幼いころから教師を目指してまっしぐらに進む人材も必要。人生の迷いを知りつつ生徒とともに成長していこうという人材もまた必要です。若者には、机で学んだ知識に経験と感覚を加味し、目指す道を選び取ってもらいたい、という思いを込めました。
◎狩りに出かけてほしい
教育実習は、学びの宝庫です。心構え次第で多様な学びをすることができるでしょう。
こんなおいしい現場には、受け身でなく狩人の姿勢で入ってほしい。そんな願いを込めて、
・「先生」として、生徒に残したいこと
・「学生」として、つけたい力
・「いち社会人」として、学校をどう見るか
を考えてもらいました。
落語の世界では、師匠から弟子に「出の顔」について指導されることがあるそうです。出囃子が鳴り楽屋から高座にあがり、お客さんがその日初めてみる自分の顔。出の顔をどう演出するか、出の顔から噺をはじめなければいけない・・・学生にも「出の顔」を工夫してもらい、先に考えた「◯◯として」を一人ひとり教壇で話してもらいました。
「生徒とたくさん話のできる先生でありたい」
「学んできた教えかたが生徒に有効か、確かめたい」
「先生として、生物の楽しさを少しでも伝えたい」
・・・
個性的な表情であいさつし、緊張しながらも思いを語る学生。すべての学生が充分な声量で話せましたが、子音をはっきり発音した方がよいな、と感じられる学生もいたので、助言しておきました。当初の後半でもう一度教壇に立ってもらう予定だったのですが、実施日間近の受講人数増加に対応できませんでした。教育学部と違い、教壇に立つ経験が少ないでしょう。短時間であっても教壇から教室全体に向かって話す機会が持つことができれば、よりよいと思います。
◎おしゃれと身だしなみのちがいについて
思いのほか、職員室での話題にのぼります。染髪が目立つ、ワイシャツの下に柄物のTシャツ、アクセサリーが華美・・・おしゃれと身だしなみの違いについて考えてもらいました。おしゃれは自分の楽しみ、身だしなみは他人に心地よさを与える嗜み。この二つを混同する若者も多い中、どの学生も理解してくれているようでほっとしました。心地よい実習期間を過ごしてもらいたいものです。そしてこの違いを考えることは、いつかきっと生徒指導に役立つでしょう。
◎実習生としての仕込み
学級に配属されると、その日から「先生のお話」があります。はじめの一週間はその日そのときのことだけで時間が過ぎてしまいますから、お話のネタは実習前に5つくらいは仕込んでおきたいもの。高校時代の話、研究生活について、部活動夏の大会に向けて、趣味の話、受検について・・・講座の中では、ひとつのネタを話に組み立て、2人に発表してもらいました。併せて何度か機会のある「あいさつ・自己紹介」についても触れておきました。人前で自分を語ることで、自らを振り返り、自分のやってきたことの価値に気付くことにつなげてくれることを願います。
若い教員が戸惑いやすい分野に、研修があります。学校による独自性・教員の個性・生徒の実態等々、研修分野にはつかみにくい要素が多いのです。今回は授業の見かたに絞り、その背骨部分だけを確認しました。
A:こんな状況の生徒を
↓
B:このような手立てで
↓
A’:このような生徒に変えたい
このような授業目標の背骨を知るだけでも、授業を分析的にみる足がかりにはなると思います。実習前に必要な知識のひとつです。
◎信頼を守ること・残念なこと
守秘義務はもちろん、実習録を必ず提出することはしっかりと伝えました。すべての学生に、日々感じる率直な気持ちを紙面に刻みつけてもらいたいです。長い時間が経ったあと、青春時代の宝物となることを祈ります。
◎最後に・・・学生の感想から
・3年生の時に教育実習に行けたら良いのにと思った(農学4年)
・面白かったです。実際に役立つ話がたくさんあり、助かりました。時間が足りないと思ってしまい、残念でした。(農学4年)
・教育実習についてホントに何も情報がないまま実習が始まるかと心配だったので良かったです(理学4年)
・教育実習についての不安が少し解消されました。
・教育実習に向けた心構えを教えていただき、学校でどのように過ごせばよいのかわかりました。教育実習に対するモチベーションが高まりました。(人文3年)
・教育実習への前向きなこころの準備ができました。(農学4年)
・とても楽しいプログラムでした。(理学4年)
・先生が面白くて、私もこんな風に明るく通いたいなと思いました。(農学4年)
・思っていたよりもテンポ良く;明るく進行していただけたので、とても楽しかったです。実習が待ち遠しくなりました!ありがとうございました。(理学4年)
・池谷先生 とっても面白かったです!とてもタメになりました!!教師ってすごいなぁ、と思うガイダンスでした!!先生の魅力を感じました!がんばります!(理学4年)
・現場での話も交えながらで、とてもためになりました。(理学4年)
・教育実習のイメージがなんとなくつきました。ありがとうございました。(人文4年)
・やはり今まで聞いてきたことが何回か出てきた。ということは、それほど大切なことだと思ったと同時に確認することができたのでよかった。(人文3年)