「静大の学際科目を考えるフォーラム」に参加しての感想

学際科目部運営委員(工学部) 松田 智
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 標記の「フォーラム」は、2008年9月に第1回が開催されて今回が2回目である。本フォーラムは、2年前の学際科目部運営委員会が起ち上げた「学際科目プロジェクト」の一環として企画された。学際科目は、全学教育カリキュラム中の重要科目の一つであり、そのため全教員が部会登録されている。したがって、本来は、本学の全教員が自分の担当科目の一つとして意識していなければならない「ハズ」の科目である。しかし、現実には多くの教員にとってなじみの薄い存在であることも事実である。そこで、この「学際科目」について、理解を深めていただき、新たな科目開発や授業内容の深化に役立てていただこうというのが、本フォーラムの趣旨である。この狙いは、今回は果たされただろうか?

 前回は4部構成であった。まず、当時科目部代表だった松田が基調報告を行い、その後は実際に科目を担当されている4名の先生方に、ご自分の科目の実際内容などを紹介していただいた。次いで、科目部が実施した学生ニーズ調査結果を報告し、最後に総合討論を行った。今回も4部構成だったが、最初の基調報告は同じとし、科目紹介は2名の先生だけにとどめ、代わりに名古屋大学での教養教育のご紹介をいただいた。最後に総合討論を置いた点は同じである。
 最初の松田の基調報告は、基本的に前回と同じ内容である。学際科目の概要紹介であるから、大きくは変えようがないけれど、全くのコピーでは芸がないので多少は工夫したが、ここで敢て紹介するほどの深化とは言えない。
 名古屋大学での教養教育のご紹介は、種々興味深い内容で大いに参考になった。基本的な運営方法は実質的に本学と同様であるが、科目担当の割振りは、かなり強制的というか機械的に順番に行っている。その代わり(?)、科目名を固定して、誰が担当しても一応は何とかこなせるラインアップを揃えている印象であった。本学で言えば、現代教養科目の個別分野科目に近い内容・運営方法と言えようか。本学の学際科目に相当するような、科目立案から開講まで教員の自主性に任せる科目はないとのお話であった。旧帝大系の巨大組織になると、ある程度割り切った運営方法を採らないとやって行けないということだろうと思った。
 実際の授業紹介は、静岡・浜松各1科目ずつ。いずれも学際科目部運営委員の先生方であった。いわば「身内」だけによるプログラム構成だったわけで、学際科目担当者の「輪」を広げるという本フォーラムの趣旨から見て適当であったかどうか、多少議論の分れるところだろう。ただし、今回はその授業の受講生が出席されていて、受講の感想などを述べて下さった点は興味深く、かつ参考になった。
 プログラム4つ目の総合討論。学生さんや社会人の受講者からは積極的な発言が相次いだが、肝心の教員側からは、さしたる意見が出てこなかった。私自身が期待していた主な論点は次の3つである。1)教養教育は何を目指すのか?:本学での教育において、教養教育は何を担うべきか?2)その中での学際科目の役割は?:学際科目とは何か。いかにあるべきか?3)新たな科目を構想するならば、どんな内容を望むか? 
 このような議論があって、その次に学際科目の授業展開方法とか授業形態の在り方とか、成績評価の問題などが俎上に上がるべきだと考えていた。しかし実際には、こうした論点はほとんど聞かれなかった。最後の伊東学長のご挨拶においても、教員側からの意見がほとんど出てこなかった旨の講評が聞かれたのも致し方なかったと思う。議論を盛り上げる意味で、もう少し学際科目部運営委員からの発言もあって良かったかも知れないという反省も少しある。私自身は最前列に座っていたので、科目部運営委員が何人出席されていたのかも知らないのだけれど。
 というわけで、私自身の中で今回の「学際科目フォーラム」は、前回ほどの盛り上がりや達成感を得られずに終わった。参加して下さった方々には、満足していただけたのか、あまり自信もない。次回(があるかどうか分らないが、あるとして)以降の「巻き返し」に期待したい。
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